十和田湖の水温長期変動とヒメマス、ワカサギ漁獲量変動及びこれらの関係について


青森県内水面水産試験場 研究開発部

[連絡先]0176-23-2405

[推進会議]内水面

[専門]資源生態

[研究対象]淡水魚

[分類]研究


[ねらい・目的と成果の特徴]

・十和田湖の観光資源としても重要なヒメマスは漁獲量の減少、不安定化が近年著しく、同時に起こっているワカサギ漁獲量の増加と相まって関係者の関心を集めている。青森、秋田両県は1968年以来諸調査を分担して行っているが、ここではこれら魚種の漁獲量変動を水温データから考察した。
・結果
(1)十和田湖の水温変動は1968〜1979年までは温暖化期(I期)、1979〜1985年までは1982年を底とする寒冷・温暖化期(II期)、1985〜1996年までは寒冷化期(III期)となっており、1997年以降は温暖化期(IV期)に転じている(図1)。
(2)I期はヒメマス漁獲量の漸増期によく対応しており、また、II〜IV期はヒメマス漁獲量の変動期に対応していることがわかった。あわせて、ヒメマスではI期では3年前、II〜IV期では4年前の水温状況が、また、ワカサギでは1年前の水温状況が漁獲量の上下変動に対応していることがわかった(図1〜3)。
・考察
(1)ヒメマスは動物プランクトンを好食する。I期における順調な漁獲量の伸びは水温上昇傾向(=基礎生産量上昇)による餌料プランクトン発生量の増加がベースとしてあり、また、その間の細かな上下変動も同様の機構による餌料プランクトンの増減が稚魚期の生残を左右した結果と捉えることができる。また、II〜IV期のヒメマス、ワカサギも基本的には同様の機構によりそれぞれ4年後、1年後の漁獲量変動になって現れると考えられたが、I期ほどの明瞭な水温―漁獲量関係は見られなかった(図4)。これは、餌をめぐって競合関係にあるワカサギが新たに参入し、それまでの生態系に変化が起きたためと考えられた。
(2)近年のヒメマス大型個体(体重60g以上)は、しばしばワカサギの稚魚や成魚を捕食しており、好適な餌料プランクトンが豊富に存在しない場合には魚食性に転換すると考えられる。ワカサギ(1925年及び太平洋戦争終戦前に放流の記録あり)が1982年になって突然出現したのは、この時期(II期)の湖が寒冷状態で餌料プランクトンが相対的に少なくなり、ヒメマス放流稚魚の生残が低下したことに加え、同時に高水準に生息するヒメマス大型個体が飢餓状態になってこれらの稚魚を捕食し、結果としてヒメマス稚魚の大部分が減耗し、これらが占めていた生態的地位にワカサギが入り込めたためと考えられた。

[成果の活用面等]

・考察の検証等を行い、十和田湖におけるヒメマスの環境収容力算出のための基礎資料とする。

[具体的データ]

図1 十和田湖(ふ化場前)の表面水温移動平均値の推移

図2 十和田湖のヒメマス、ワカサギ漁獲量の推移

図3 水温移動平均値推移とヒメマス(3年及び4年前ずらし) ワカサギ(1年前ずらし)漁獲量の推移

図4 図3の水温と漁獲量の関係(破線:95%信頼区間)
注)ヒメマス変動期の漁獲量はヒメマス+ワカサギ分(ワカサギが突出して多い'90年のデータは除去)