神奈川県海域におけるあわび類の放流適種の選定


神奈川県水産総合研究所栽培技術部

[連絡先]0468(82)2314

[推進会議]中央ブロック

[専門]増養殖技術

[研究対象]あわび

[分類]普及


[ねらい・目的と成果の特徴]

・暖流系アワビ類にはクロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビの3種がある。神奈川県を含む暖流域におけるアワビ栽培漁業においては、種の特性を考慮した放流はこれまで行われていない。そこで、クロアワビ及びマダカアワビ人工種苗間の放流初期における死亡率の差について調査を行い、放流種の検討を試みた。潜水調査による結果から放流初期の死亡率についてTanaka et al.(1991)の数値モデルを改変して推定したところ、調査を実施した城ヶ島地先ではマダカアワビの初期死亡率がクロアワビより極めて低く、放流種として優れている結果となった。

[成果の活用面等]

・夏期の潜水漁業主体の漁場においては、マダカアワビ及びメガイアワビ主体の放流をするよう指導を行っている。

[具体的データ]

97年11〜12月に採卵し育成したクロアワビ(平均殻長41mm)170個及びマダカアワビ(同41mm)199個を99年6月に三浦市城ヶ島地先で放流し、追跡調査(Table 1)を実施した。死亡率は放流初期が特に高いことが考えられ、放流初期とそれ以降に分けて推定を行った。放流初期(放流後43日間)の死亡率は,クロアワビが0.025/日,マダカアワビが0.010/日となり,クロアワビの死亡率が2倍以上高い結果となった。また,放流後44日以降の死亡率は,クロアワビの場合,0.023/日と放流初期の死亡率と大差なく,一方マダカアワビは大きく減少し,推定死亡率は0.000/日となった(Fig. 1)。放流したアワビの初期減耗の要因としてはこれまで報告されているのと同様,食害によるものと考えられる。しかしながら,クロアワビがマダカアワビよりなぜ食害によく遭うのかは不明であるが,クロアワビがマダカアワビに比べて運動性が高いといわれることから、行動生態の違いによるものが原因の一つとして考えられた。死亡率の推定結果の優劣で評価した場合,クロアワビよりマダカアワビのほうが,城ヶ島地先の漁場においては,放流種として適しているものと考えられた。

Fig. 1 Estimated daily mortality rates of Haliotis discus discus and H. madaka following release. Mortality rates show for the early periods (tk≦43) and the late periods(44≦tk ) following release. Bars show the estimated mortality rate and error bars show 95% confidence interval.
Table 1 Results of diving investigation.