ハビタットモデルによるニシクロカジキの資源量指数の推定


[要約]  はえ縄漁具と漁獲対象魚種の鉛直分布パターンの推定値を用いて、はえ縄漁業の漁獲種の有効努力量を直接推定するハビタットモデルは、太平洋のマグロ・カジキ類には多く適用されてきたが、今回初めて大西洋のニシクロカジキに対して適用した。これまでのカジキ類のハビタットモデル解析では、ハビタットモデルから推定されるカジキ類の主分布域がカジキ類の主漁場と異なるという問題があった。今回の研究では、(1)過去のはえ縄調査データを基に、漁具の水中動態及びシアー流による漁具の吹き上げ率を推定した、(2)初めて沖合の漁場域でニシクロカジキに装着したアーカイバルポップアップタグのデータを基に鉛直分布パターンを推定した、ことによって従来の問題を克服することに成功した。解析により得られた資源量指数は、近年のニシクロカジキの資源状態が、従来の結果よりも良好な状態にあることを示唆していた。

遠洋水産研究所 近海かつお・まぐろ資源部 かつお研究室

[連絡先]0543-36-6032

[推進会議]遠洋漁業

[専門]資源生態

[対象]かじき類

[分類]研究


[背景・ねらい]

大西洋ニシクロカジキの資源評価は、日本のはえ縄のCPUEを基にして得られた資源量指数を用いて行われている。しかしながら、大西洋で操業する日本のはえ縄漁船の操業形態及び漁場が年代によって大きく変化し、ニシクロカジキ分布域に対する操業域カバー率が、水平的にも鉛直的にも急激に悪化した。そのため、従来資源量指数の推定に用いられてきた努力量及び漁獲量統計のみを使ったGLMアプローチでは、操業形態や漁場の変化の影響を排除した有効努力量の推定が困難であることが指摘された。そこで、有効努力量を直接推定するハビタットモデルを資源量指数の推定に導入することで、より精度の高い指数を推定する事が必要となった。従来のカジキ類に対するハビタットモデル解析では、結果の一部が既往の知見と矛盾するという問題点があったが、調査から得られた実際のデータをモデルに組み入れることで、これらの問題点を検討することとした。

[成果の内容・特徴]

・はえ縄漁具の鉛直分布は、過去のはえ縄調査中に得られた小型水深水温計による漁具の水中挙動に関するデータと、退職した遠洋はえ縄漁船の漁労長へのアンケート、オブザーバーデータを基に推定した。

・過去のはえ縄調査中に得られた小型水深水温計のデータを基に、シアー流と漁具の吹き上げ率の関係を求め漁具の鉛直分布を推定するモデルに組み込んだ。

・ニシクロカジキの鉛直分布パターンは、沖合の漁場域でニシクロカジキに装着したアーカイバルポップアップタグのデータを基に、他の水域のデータを参考にして推定した。

・推定した有効努力量から求めたCPUEの分布パターンは、1960〜1990年代を通じてほぼ同様の傾向を示し、それらは、総漁獲量分布から推定されたニシクロカジキの分布パターンとよく一致していた。

・ハビタットモデルで得られたニシクロカジキの資源量指数は、近年のニシクロカジキの資源状態が、従来考えられていたものよりも良好であることを示唆していた。

[成果の活用面・留意点]

・今後、モデルを使って、ハビタットモデルとGLM手法の推定精度を比較する必要がある。

・資源量指数推定に当たって、海区によるCPUEの経年変化の違いを考慮する必要がある。

・ニシクロカジキの鉛直分布パターンの推定精度を向上させるために、更に多くの水域・季節で調査を行いデータを蓄積する必要がある。

[具体的データ]

図1 はえ縄漁具の鉛直分布パターン(右)とニシクロカジキの鉛直分布パターン(左)

図2 従来のGLMとハビタットモデルで推定したニシクロカジキの資源量指数


[その他]

研究課題名:カジキ類資源解析及び評価

予算区分:委託、国際資源調査

研究期間:平成13〜17年度

研究担当者:余川浩太郎、齊藤宏和、庄野 宏

発表論文等:Yokawa, K., M.Okazaki, H.Okamura, T.Matsumoto, Y. Uozumi, and H. Saito. (2002) An estimation of effective fishing effort of Japanese longliners on Atlantic blue marlin, Makaira nigricans, in the Atlantic Ocean. Handbook and Abstracts of Third International Billfish Symposium p. 25

Saito, H., K.Yokawa, M. Okazaki, H.Yamada, and Y. Uozumi.(2002) An estimation of vertical distribution pattern of Atlantic blue marlin, Makaira nigricans, in the tropical cetral Atlantic based on the archival pop-up tag. Handbook and Abstracts of Third International Billfish Symposium p. 22.