耳石日周輪幅から算出した太平洋のメバチの成長


[要約]

本研究は、大型メバチ耳石日周輪幅を計測し、体長データと合わせ、成長曲線を求めたものである。メバチについては、漁獲物の体長組成と鱗による年齢査定より成長曲線が求められているが、高年齢魚に関する年齢査定もあいまいであった。また、耳石日周輪幅から成長曲線を求めた研究はほとんどなく、精度の高い年齢査定を行った上での成長曲線を求めたものは、本研究が初めてであると思われる。メバチの耳石日周輪幅を電子顕微鏡下で計測し、その累積と体長の関係をBertalanffyの式に当てはめた結果、成長曲線式は、L = 208.34(1−e−0.1985152t−0.1666)となった。

神奈川県水産総合研究所 海洋情報部

[連絡先]0468-82-2315

[推進会議]遠洋漁業

[専門]資源生態

[対象]まぐろ

[分類]研究


[背景・ねらい]

メバチは本県遠洋まぐろはえなわ漁業の最重要魚種であり、本県全体の水揚金額の約2割を占めている。しかしキハダ狙いの東部太平洋や大西洋におけるまき網漁業によりメバチ若齢魚が大量に混獲され、資源量に影響を与えている可能性がある。資源量推定の一つの指標である成長曲線は、過去においては主に漁獲物の体長組成から求められているが、高年齢魚の査定があいまいなため、電子顕微鏡により耳石日周輪(図1)を計測し、新たな成長曲線を求めた。

[成果の内容・特徴]

・ 資料は太平洋で漁獲されたメバチ(体長86〜183cm、)について耳石日周輪幅を電子顕微鏡下で観察し、日周輪の本数(40個体)と幅(5個体)を計測した。

・ メバチ耳石長(核から縁辺部までの長さ)と体長は直線回帰で示された(図2)。日周輪幅を全て計測した5個体について、日周輪幅は日齢の増加とともにほぼ同じような変化を示した(図3)。15日齢までは10μm以下であったが、15〜45日齢ほどにかけて20〜35μmの幅の広い日周輪が形成された。45〜60日齢にかけては40μm以上で最も幅の広い日周輪が形成された。60〜75日齢には逆に急激に幅は減少し、約25μm前後で推移した。その後190日齢までは20μmから10μm前後まで緩やかに減少し、それ以降10μm以上の日周輪が形成されることはほとんどなかった。1500日齢を過ぎると2〜3μm程度で推移した。

・ 累積日周輪幅と体長の関係をBertalanffyの成長曲線に当てはめたところ、L = 208.34(1−e−0.1985152t−0.1666)の式が算出された(図4)。鱗紋から求めた成長曲線(須田・久米、1967)とは1〜3歳魚で違いが見られた。

[成果の活用面・留意点]

本報の計測個体は、日齢が一番少ないもので960日(2.6歳)であり、最高で2401日(6.5歳)と幅広く日齢査定を行ったが、1〜2歳魚の日齢査定は行っていない。今後はこれらの耳石日周輪を計測し、さらに鱗紋データとの整合性を調べる必要がある。

また、本報では太平洋のメバチを資料に用いたが、大西洋、インド洋の個体、あるいは年度別に計測を行い、各々の成長曲線を求め、年齢別の資源量を算出する基礎データの精度向上が求められる。


[具体的データ]

図1 耳石日周輪の電子顕微鏡写真

図2 耳石長と体長の相関関係

図3 日齢と耳石日周輪幅の関係

図4 耳石日周輪幅から求めた成長曲線


[その他]

研究課題名:耳石日周輪幅から算出した太平洋のメバチの成長

研究期間:平成12年度〜

研究担当者:加藤健太

発表論文等:東部太平洋で漁獲されたメバチ(Thunnus obesus)の耳石日周輪について(短報)、神水研報、6、67-70、2001