山陰のヒレグロ(沖合底曳網で漁獲されるカレイの仲間)の生態と資源管理


[要約]山陰沖合で漁獲されるヒレグロは,雌雄で成長が異なり,雌の方が早く成長する.特に雄の最大体長は約21cmであり,漁獲の主体は体長20cm前後であることから,水揚げされたヒレグロのほとんどが雌である.また,水揚げ量の約10倍が投棄されており,これを保護することで,漁獲量は飛躍的に増加することが見込まれる.現在の投棄魚の半分を保護した場合のシミュレーション結果では,10年後には漁獲量,金額とも現在の9.3倍になると見込まれた.よって,今後小型魚の保護の必要性が示唆された.

鳥取県水産試験場海洋漁業部海洋資源科

[連絡先]0859-45-4500

[推進会議]日本海ブロック

[専門]資源生態・資源評価

[対象]カレイ

[分類]研究


[背景・ねらい]

 鳥取県の沖合底曳網の重要魚種であるヒレグロの漁獲量は,1984年から減少し,近年低位で安定している.そして,本種の生態については昭和30年代に報告があるだけで,資源状況,漁獲実態については全く調査されていない.そこで,これらを明らかにし,今後の資源の活用を図ることを目的としている.

[成果の内容・特徴]

・本県で漁獲されるヒレグロは体長17cmにモードを持つ単峰型で表せ,漁獲尾数は,1999年で雌が約279万尾,雄が約24万尾と計算された.

・本種の主分布域は,隠岐島以西で,特に4,5月に高密度域が出現した.また,分布水深は150mから600mで9月は400m,3月は180mに高密度域がみられる.

・産卵期は3月頃と推定されたが,過去の調査とずれがあり,精査の必要がある.

・成長式は,雌 :Lt=378.2*(1-e-0.1164*(t+1.186)) ,雄:Lt=214.2*(1-e-0.2478*(t+1.072)) であり,雌のほうが成長が早い.

・体長10cmから15cmの個体の多くは投棄され,その量は漁獲量の10倍にのぼると推測された.

・資源解析の結果,現状は乱獲状態にあることがわかった.

・リッカー型の再生産関係を仮定し,漁獲開始年齢を3歳にすると,現状の6倍程度の漁獲の増加が見込める.(図1

・網目試験から投棄魚の半分を保護するには網目を6節以上に拡大する必要があるとの結果が得られたが,現在使用している網目が8,9節ということを考慮すると現実的ではないと考えられた.

・現在の投棄魚の半分を保護した場合のシミュレーション結果では,10年後には漁獲量,金額とも現在の9.3倍になると見込まれた.(図2

・本種は投棄魚が多く,この投棄量を減らすことで,漁獲量,生産額を減らすことなく資源の回復が望めることが判った.

[成果の活用面・留意点]

 これらの結果から,山陰沖合で漁獲されているヒレグロは,投棄魚を保護することで漁獲量を大幅に増加させることが出来ることが判った.今後は,投棄魚をいかに保護するか,その手法を開発する必要がある.また,今回の解析に用いた資源特性値はきわめて粗いものであり,今後精査する必要がある.

[具体的データ]

図1 再生産を仮定した時の漁獲のみの等漁獲量曲線

図2 投棄魚の半分を保護した場合のシミュレーション結果


[その他]

研究課題名:沖合底魚重要資源調査(県単事業)

研究期間:平成7年〜13年

研究担当者:増谷龍一郎,倉長亮二

発表論文等:平成7年度〜13年度鳥取県水産試験場年報