北西太平洋における北上期スルメイカの分布特性


[要約]北上期のスルメイカについて、中層トロール漁獲調査を行った結果、体サイズによる分布特性の変化と水温環境との関係が明らかになり、幼体は沖合を広く北上し、表層性が強い、成長とともに親潮水域や沿岸域に来遊し、分布水深が拡がり日周鉛直移動が顕著になることがわかった。

東北区水産研究所・八戸支所・資源生態研究室

[連絡先]0178-33-1500

[推進会議]東北ブロック水産業関係研究試験推進会議

[専門]資源生態

[対象]するめいか

[分類]研究


[背景・ねらい]

 北西太平洋における北上回遊期スルメイカの分布特性については知見が少なく、とくに鉛直的な分布特性や幼体の分布についてはあまりわかっていない。北上期の生残率が各年級の加入量の多寡に及ぼす影響は大きいと考えられており、資源管理のために漁業資源加入前の北上期における精度の高い現存量評価の導入が望まれている。北上期の生残過程を解明するため、あるいは定量的な採集方法を検討するために分布特性の知見が必要である。

[成果の内容・特徴]

  1. 2隻の調査船の漁獲特性の異なる中層トロール漁具、俊鷹丸(網口30×30m・4枚パネル、ごく表層に効果的) と開洋丸(網口50×50m・6枚パネル、俊鷹丸より深い層に効果的)を併用し、2000年6〜7月に北西太平洋において漁獲試験を行い、比較検討した。
  2. スルメイカは黒潮続流に移送されながら、本邦近海から東経162度に至るはるか沖合まで広く北上して索餌海域である本邦沿岸域や親潮水域に達していた(図1
  3. 体サイズに応じて次のような分布特性がみられた。

    ML10cm以下:沖合の北上暖水縁辺に多く分布し、表層性が強かった(図2図3)。

    ML10〜15cm:沖合の親潮系水と暖水の潮境や本州沿岸域に多く分布し(図2)、昼間は30m以深、夜間は表層と日周鉛直移動した(図3)。

    ML15cm以上:道東沿岸域や本州沿岸域に多く分布した(図2)。図顕著に日周鉛直移動し、親潮系水が差し込み水温躍層が顕著にみられる海域では夜間表層に浮上したが、津軽暖流域で水温が比較的高い海域では、夜間でもおもに水深30m以深に分布した。また、約5℃ 以下の親潮系冷水がある場合には昼間でもこれより浅い層に分布した。

  4. このような体サイズによる分布特性の変化は、成長とともに低水温への耐性の増加や餌生物の変化などの生態的な変化が生じるためと考えられた。

[成果の活用面・留意点]

  1. スルメイカの北上期における生残過程を解明する上での基礎的知見となる。現存量評価のための定量的な採集方法を検討する際の基礎的知見となる。
  2. 2000年6〜7月1期の調査に基づく結果であり、同様な調査を継続して検証する必要がある。また、日周鉛直移動を開始するサイズや成長にともなう餌生物の変化などの生態的な変化については、他の手法を取り入れてさらに詳細に解明することが望まれる。

[具体的データ]

図1. 2000年6-7月の中層トロールによるスルメイカ漁獲分布(1時間曳網当たり個体数)

図2. 本邦近海におけるスルメイカの平均外套長と表面水温の分布

図3. 本邦近海太平洋におけるスルメイカ北上回遊の模式図


[その他]

研究課題名:サンマ等多獲性浮魚類の分布・来遊動態と資源特性との対応の把握

予算区分:経常・資源評価調査

研究期間:平成12〜13年度( 平成12〜17 年度)

研究担当者:川端 淳・上野康弘・栗田 豊・巣山 哲・谷津明彦(中央水研))

発表論文等:2000年6月の北西太平洋における北上期スルメイカの表層トロールによる漁獲試験結果、

       いか類資源研究会議研究報告、平成12年度、2001。

        中層トロール調査から想定される北西太平洋における北上期スルメイカの分布特性、

       平成13年度日本水産学会春季大会講演要旨集、2001。