イカナゴ稚仔魚期の仙台湾の海況を人工衛星による海面水温画像で評価し、漁況を予測する。


[要約]宮城県の重要な春期沿岸漁業である火光利用敷網漁業の漁期に先立ち、漁獲対象となるイカナゴ稚仔魚期の仙台湾の海況を人工衛星ノアによる海面水温画像を基に空間統計処理を行って解析し、類型化された海況条件により漁期中の漁況(漁獲量)を予測する方法を検討した。

宮城県水産研究開発センター・海洋資源部

[連絡先]0225-24-0138

[推進会議]東北ブロック水産業関係研究試験推進会議

[専門]資源評価海洋構造

[対象]いかなご

[分類]研究


[背景・ねらい]

 イカナゴの稚仔魚は、宮城県の春季沿岸漁船漁業の重要な漁獲対象種であり、4月・5月の2ヶ月にわたり火光利用敷網漁業によって水揚げされる。この漁業は稚仔魚期を対象としていることから、外洋性の開放型湾と言える仙台湾漁場では、その漁況は海況による輸送の影響を受けることが知られており、この輸送による拡散が1月のふ化直後における分布調査で推定される発生量と、漁期中漁獲量に明瞭な関係が見られない原因の一つであると考えられる。そこで、仔魚の分布動態と気象・海況条件の関連について検討する最初の取りかかりとして、社団法人漁業情報サービスセンターから提供された三陸沿岸海域の観測衛星NOAAの海面水温情報を基に、空間統計学の手法によりその特徴を解析し、仙台湾の海況を類型化する可能性を検討すると共に、類型の出現状況から漁期中の漁況(漁獲量)を予測する方法を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 1996年から2000年の1月から5月までの期間に得られた条件の良い衛星画像データを用いて、海面水温の空間的連続性を強く示す方向軸(真方位)を空間統計処理でもとめてその方向軸の出現頻度を調べたところ、事例数の多い特異値が見られ、その特異値の前後に方向軸の分布が偏っていた(図1)。
  2. 1999年2月に第二管区海上保安本部水路部が流向・流速計で観測した仙台湾の実測値による流れの方向と、その時の衛星画像から得られた方向軸とは一致した。
  3. 工藤が1971年・1972年に海洋観測結果から発表した仙台湾における沖合水流入(沿岸水流出)の類型と、今回の衛星画像の方向軸の分布との関係について検討し、最尤的に沖合水流入型と方向軸の範囲を対応させた(表1)。
  4. 衛星画像の方向軸から1996年から2000年の仙台湾の海況を旬別に工藤の区分に類型化し、既存の生態的な知見から便宜的に各類型の評価点を与え、漁期前の1月から3月まで累計点数とその後の4月・5月の漁獲量との関係を見ると正相関になったことから、漁況予測の可能性が示唆された(図2)。

[成果の活用面・留意点]

 今回得られた海況類型と漁況との関連について、それぞれの海況類型の評価(漁況に対する影響の仕方と度合い)は、数量化モデルによる多変量解析や、実測による稚魚分布動態との比較が必要なことから、今後更にデータセットを蓄積したい。

[具体的データ]

図1 人工衛星画像による海面水温方向軸の分布

表1 沖合水流入型と方向軸(主軸)範囲の対応と、その出現状況

図2 海況評価点数と火光利用敷網漁獲量の関係


[その他]

研究課題名:近海重要資源評価推進調査事業

予算区分 :宮城県単独事業

研究期間 :平成13年度から17年度

研究担当者:永島 宏

発表論文等:NOAA−SSTでみるイカナゴ稚仔魚期の仙台湾の海況、

        宮城県水産研究報告、第2号、2002(印刷中)