広島湾における窒素の収支


[要約] 広島湾における窒素の現存量は懸濁態窒素溶存態窒素が大部分を占め、海藻・海草類の占める割合は1%以下であり、カキの占める割合は全体の5-12%であった。窒素の収支を検討した結果、陸域から負荷された窒素は大部分が海底へ堆積あるいは湾外へ流出し、広島湾から水産生物として水揚げされる量は陸域から流入する負荷の約5%であった。

瀬戸内海区水産研究所 瀬戸内海海洋環境部 生産環境研究室

[連絡先]0829-55-3492

[推進会議]漁場環境保全

[専門]生物生産

[対象]植物プランクトン

[分類]研究


[背景・ねらい]

 持続的・安定的なカキの養殖を行いかつ良好な養殖環境を保つためには、対象海域の窒素等栄養物質の循環過程を明らかにし、適切な養殖密度や栄養物質濃度を把握することが重要である。本研究は、広島湾におけるカキの養殖管理に資するため、窒素負荷量とその動態を明らかにすることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

・ 広島湾(図1)における窒素の循環経路について概略を整理し、海草や海藻、プランクトン、カキなど重要と考えられる生物群の調査を行い現存量を把握した。

・ 広島湾における海水中の窒素現存量は懸濁態、溶存態窒素が大部分を占め、海草・海藻類の占める割合は1%以下、カキは5-12%であった(図2)。

・ 天然カキの調査を行い現存量を見積もったが、軟体部重量で全体の3%程度に過ぎなかった。

・ 海水中の溶存態窒素および懸濁態窒素の現存量は平均4,029トンであり、このうち約6.5トン/日が湾外に流出すると見積もられた(図2)。

・ 陸域からの流入負荷は年間5,800トン程度であり、このうち海底に堆積したり湾外に流出するものが大きな部分を占めていた(図3)。

・ カキ等水産生物の収穫による窒素の除去は流入負荷の約5%であった。

[成果の活用面・留意点]

 広島湾における窒素の収支の概略が明らかとなり、カキ養殖密度や水質等養殖場管理に資することが期待される。今後調査を重ねて現存量、生産量の精度を高めることが必要である。さらに流入負荷の変動によってカキ生産量や水質がどのように変動するか解析することが望まれる。

[具体的データ]

図1 調査対象海域(広島湾)

図2 広島湾における窒素の現存量

図3 広島湾における窒素の収支(単位はトン/年)


[その他]

研究課題名:広島湾における低次生産構造の解明

研究期間:平成12年度〜14年度

研究担当者:内田卓志・樽谷賢治・辻野 睦

発表論文等:

・ 保科次雄・加藤正樹・西尾 隆・内田卓志. 森林・農地・水域における養分収支を踏まえた自然循環機能に関する研究推進について. 第18回土・水研究会(2001)

・ 内田卓志. 広島湾における生物生産とこれに伴う窒素の循環についてー自然循環機能プロジェクト研究の一環としての取り組みー. 第31回南海・瀬戸内海洋調査技術連絡会(2001)