魚卵の材料となる蛋白質で環境ホルモンの影響を調べる方法


[要約]マコガレイ血液中のコリオジェニン卵膜蛋白の材料)及びビテロジェニン卵黄蛋白の材料)濃度を周年にわたって調査し、これら環境ホルモンの生物指標として注目されている血清蛋白の、雄における季節的濃度変化を初めて明らかにした。

瀬戸内海区水産研究所・環境保全部・生物影響研究室

[連絡先]0829-55-0666

[推進会議]漁場環境保全

[専門]有害物質汚染

[対象]かれい

[分類]研究


[背景・ねらい]

 コリオジェニンは、卵膜を構成する蛋白質の主な材料であり、女性ホルモンの作用によって肝臓で作られ、血液にのって卵巣まで運ばれる。従って、これまでは成熟期の雌魚の肝臓、血液及び卵膜にのみ存在する蛋白質であると考えられていた。しかしながら、女性ホルモンを与えることによって雄の肝臓でも産生されることが明らかになり、女性ホルモン活性を有する内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の生物指標として注目されつつある。

 本研究は、(1)血液中コリオジェニン濃度の測定法を開発すること、(2)環境ホルモンの生物指標としてのコリオジェニンの有用性を、同指標として広く認知されているビテロジェニン(卵黄蛋白の材料)との比較により明らかにすること、(3)コリオジェニンを指標として環境ホルモンの魚類への影響実態を把握することを目的とする。

[成果の内容・特徴]

・平成12年11月から13年10月の間、宮島周辺海域(広島県)で漁獲されたマコガレイを対象として毎月20尾の体重、体長、生殖腺重量等を計測するとともに血清中のコリオジェニン及びビテロジェニン濃度を時間分解蛍光免疫測定法により測定した。

・ 生殖腺は、雌雄ともに12月に最も発達し、本海域では12月を中心として成熟、産卵することが明らかになった(図1)。

・ 雌では、ビテロジェニン(図2)、高分子コリオジェニン(図3)及び低分子コリオジェニン(図4)の何れも産卵期である12月に最高値を示し、卵巣の発達との関連が示唆された。ビテロジェニンは最低値を示した8月まで緩やかに低下したが、2種類のコリオジェニンは共に2月には急減し、5月に最低値を示した。

・ 雄でもこれらの血清蛋白に季節的濃度変化が認められた。雄は、10月にビテロジェニンの最高値(593ng/mL)、2月に最低値(0.53ng/mL)を示し、その差は約1000倍であった(図2)。また、高分子コリオジェニン(図3)の最高値(10月の1.88ng/mL)と最低値(2月の0.05ng/mL)、低分子コリオジェニン(図4)の最高値(11月の31.1ng/mL)と最低値(1月の0.10ng/mL)を比較しても約30倍の差がみられた。雄におけるこれら血清蛋白の変動は、生殖腺の発達とは必ずしも一致せず、今後その要因を解明する必要がある。

・以上の結果から、コリオジェニンやビテロジェニンを指標として水域の環境ホルモン汚染の程度を推定する場合、その調査時期や対象魚の性別、成熟度等を考慮しなければならないことが明らかになった。

[成果の活用面・留意点]

・ 本研究データとの比較により、他の海域の女性ホルモン活性が推定可能となる。

・ 異なる海域で採集されたマコガレイの血中コリオジェニンあるいはビテロジェニン濃度を比較する場合、性別、季節変動、成熟度等に留意して比較する必要がある。

[具体的データ]

図1 体生殖腺指数(GSI)の周年変化

図2 ビテロジェニン(Vg)の周年変化

図3 高分子コリオジェニン(CgH)の周年変化

図4 低分子コリオジェニン(CgH)の周年変化


[その他]

研究課題名:「新規バイオマーカーによる内分泌かく乱物質の魚類への影響評価法の開発と実態把握(委託プロ;環境ホルモン)」

研究期間:平成13年度(平成11〜14年度)

研究担当者:藤井一則、角埜 彰、瀬戸内海区水産研究所・環境保全部・生物影響研究室

発表論文等:平成13年度日本水産学会春季大会講要,p.150,2001.4

        Abstract of SETAC Asia-Pacific Symposium 2001. p.104. 2001. 9

        Abstract of International Symposium on Environmental Endocrine

        Disrupters 2001. p.112-116. 2001. 12