伊万里湾産有害渦鞭毛藻Cochlodinium polykrikoidesの増殖特性と赤潮発生機構の解明


[要約]1999年夏季に伊万里湾から分離されたCochlodinium polykrikoides培養株の増殖に及ぼす水温・塩分の影響を調べ、得られた増殖特性と現場環境調査結果等から、1999年夏季の伊万里湾(鷹島南岸)における本藻赤潮の発生機構について考察した。

長崎県総合水産試験場 養殖技術開発指導センタ− 環境養殖科

[連絡先]095-850-6316

[推進会議]漁場環境保全

[専門]赤潮・貝毒

[対象]植物プランクトン

[分類]普及


[背景・ねらい]

 1999年8月に伊万里湾で初めてCochlodinium polykrikoides赤潮が発生(図1)し、養殖魚類に甚大な被害(7億6千万円)をもたらした。赤潮被害を最小限に抑制するためには、その発生機構の解明が重要な課題となるが、赤潮プランクトンは海域や種類によって発生機構が異なることから、伊万里湾産C.polykrikoides株を用いた培養実験を行い、増殖に及ぼす水温、塩分の影響を調べるとともに、現場環境調査結果等から伊万里湾における本藻赤潮発生機構を解明する。

[成果の内容・特徴]

・本株は、水温17.5〜30.0℃、塩分16〜35の範囲で赤潮を形成する潜在力(1000cells/ml以上の最高細胞収量)を有し、温度上昇につれて比増殖速度が高くなる傾向があり、増殖最適条件は水温が27.5℃、塩分が32であることが明らかとなった(図23)。

・本藻赤潮発生時(8/7〜12)の現場水温は、発生前に比べ1.7℃上昇し、平均27.8℃であり、塩分は32.6であった。これら両条件は本株の増殖最適条件とよく一致していたことから、このことが本藻赤潮化の要因の一因と考えられた(図4)。

・しかし、赤潮発生時に現場で観察された本藻の比増殖速度は1.29day−1と試算され、培養実験で得られた本株の最高比増殖速度0.90day−1を上回っていたことから、短期間での赤潮化(5日間で626倍に増殖)には下記要因の関与も考えられた(図4)。

・小潮(8/6)が本藻赤潮対数増殖期と、大潮(8/11)が赤潮消滅期とほぼ一致することから、海水交換の多少が本藻の消長に関与した可能性、8/7〜9の3日間、南から東南東風(最大風速3〜6m/s、平均風速1.8〜2.5m/s)が吹き、伊万里湾鷹島南岸に本藻を集積させた可能性、本藻赤潮前に、発生していたGymnodinium mikimotoi赤潮の消滅後、8/6〜8の3日間、連日1〜20mmの降水があり、供給された栄養塩を本藻が優先的に摂取できた可能性などが考えられ、本藻の短期間での赤潮化は複数要因の相乗効果によるものと推察された。(図4)

[成果の活用面・留意点]

 今回の成果によって、本藻は好適環境条件のもとでは、短期間(数日間)で赤潮化することが示唆されたため、魚類養殖漁場では、定期モニタリング調査を実施し、本藻の出現が確認された場合には、環境条件(水温、塩分、風向、降水や競合種の有無、潮汐等)に留意し、餌止め等の適切な措置を迅速に行う必要がある。

[具体的データ]

図1 赤潮発生水域及び調査定点

図2 水温に対するC.polykrikoidesの増殖特性

図3 塩分に対するC.polykrikoidesの増殖特性

図4 1999年夏季の伊万里湾における降水量、水温、塩分、C.polykrikoides、G.mikimotoi細胞数の変動


[その他]

研究課題名:赤潮プランクトン等監視調査事業(国庫補助事業)

研究期間:平成13年度

研究担当者:山砥稔文 長崎県総合水産試験場

発表論文等: