ハイブリッド糸状体を利用した養殖ノリの新しい品種改良


[要約]壺状菌に強いことが知られているノリの緑色型変異体を野生型と交雑させてハイブリッド糸状体を作出するとともに、遺伝子分析を行った。さらに複数系統の糸状体を用いて採苗を行っている現在のノリ養殖において、ハイブリッド糸状体の利用価値を全国に先駆けて明らかにした。

兵庫県立水産試験場増殖部

[連絡先]078-941-8601

[推進会議]瀬戸内海ブロック

[専門]水産遺伝育種

[対象]のり

[分類]研究


[背景・ねらい]

 ノリ養殖の現場では、様々に変化する養殖環境に適応させるため、通常複数系統の糸状体から殻胞子を放出させて採苗を行っている。そのため、各糸状体の成熟時期を調整する必要があり、ノリ生産者にとって大きな負担となっている。また、成熟時期を調整しても、必ずしも同時に各系統の糸状体から殻胞子が放出されるとは限らない。今回、スサビノリの緑色型自然突然変異体を野生型と交雑させて遺伝子分析を行った結果、緑色型と野生型のハイブリッド糸状体から生じるF1葉状体は少なくとも8種類の遺伝子型を持つことが推定されたことから、ハイブリッド糸状体の利用は養殖ノリの新たな品種改良法として大きい意義があるものと考えられる。

[成果の内容・特徴]

1. プロトプラストを利用して分離された緑色型変異体は、フィコエリスリンの量的変異であることが推測された。(図1)

2. 遺伝子分析の結果、緑色型は野生型に対して核遺伝子による単一の劣性遺伝子支配を受けていることが推定された。(図3)

3. 緑色型と野生型のハイブリッド糸状体からは高頻度でキメラ葉状体が生じ、遺伝子型では少なくとも8種類の葉状体が同時に得られる。(図2, 図3)

4. ハイブリッド糸状体を用いることにより、複数の糸状体の成熟を調整する必要がなくなるため、カキ殻糸状体の培養や採苗時の労力も削減することができる。

[成果の活用面・留意点]

今回、開発したハイブリッド糸状体は、1種類の糸状体から採苗を行うだけで少なくとも8種類の遺伝子型の葉状体が生じるため、ノリ養殖現場で実用可能な成果であると考えられる。本年度、すでに本県の4箇所で実用化に向けた野外養殖試験を実施している。今回の研究成果は、あくまでも室内実験の結果であるため、今後、環境条件の異なる野外での結果も十分踏まえて、実用化にむけた検討を行う必要がある。

[具体的データ]

図1 野生型と緑色型の光合成色素含量

図2 交雑の結果生じた区分状キメラ葉状態

表1 緑色型と野生型のハイブリッド糸状体から生じたF1葉状体


[その他]

研究課題名:DNA解析による養殖ノリの形質固定化技術の開発(補助事業)

研究期間:平成8年度〜平成13年度

研究担当者:二羽恭介、岡本繁好、水田 章

発表論文等:Niwa et al. Genetic characterization of a spontaneous green-type pigmentation mutant of Porphyra yezoensis and the significance of utilizing heterozygous conchocelis in nori farming. Fisheries Science 2002 (in press)