成長ホルモンとプロラクチンによる魚類免疫系の促進


[要約]下垂体ホルモンが魚類免疫系の維持に果たす役割を解析し,成長ホルモン(GH)とプロラクチン(PRL)がもつ促進的な調節機構を明らかにした。

養殖研究所・日光支所・育種研究室

[連絡先]0288-55-0055

[推進会議]水産養殖

[専門]魚介類機能

[対象]魚類

[分類]研究


[背景・ねらい]

 GHの免疫増強作用は医学分野において詳細に研究され,臨床薬としての適用が検討されている。魚類においても,GHが細胞性免疫機能を高める効果を持つことが知られているが,抗体の本体である免疫グロブリン(IgM)などの液性免疫におよぼす影響は明らかではない。本研究ではGH並びにその進化上の姉妹分子にあたるPRLが,魚類免疫系,特に液性免疫の調節に果たす役割について解析を行った。

[成果の内容・特徴]

(1)サケGHをニジマスに注射すると,液性免疫の1つである血漿リゾチーム活性が上昇したが,同じサケ科魚類の蛋白は異物として認識されないため,IgM濃度に変化はなかった。

(2)ホルモン産生器官である下垂体を除去すると,IgM濃度の定常値が低下した。

(3)下垂体除去は同時に,抗体を産生する形質細胞と,その前駆細胞であるBリンパ球を減少させ,これらがIgM濃度が低下した原因であることが判明した。

(4)下垂体を除去した個体にGHまたはPRLを含む錠剤を埋め込むと,低下していたIgM濃度は正常な値まで回復し,これら2つのホルモンが抗体産生の維持に不可欠であることが明らかとなった(図1)。

[成果の活用面・留意点]

 本研究で明らかにされたホルモンによる魚類免疫系の維持・増強効果は,養殖魚の健康管理に必要な耐病性制御,疾病予防技術の開発に資する。これを実用レベルまで高めるためには,分子機構並びに遺伝的背景に踏み込んだ解析が必要である。また応用の可能性の1つとして,ストレスによる免疫力の低下に対するGH・PRLの緩和作用について,現在検討中である。

[具体的データ]

図1 下垂体除去とGHまたはPRLを含む錠剤の埋め込みが血漿IgM濃度に及ぼす影響


[その他]

研究課題名:(1)サケ科魚類の成長制御機構の解明

        (2)継代保存しているニジマス等の成長および生体防御能に関わる特性評価

予算区分:経常

研究期間:(1)平成8〜12年度,(2)平成13〜17年度

研究担当者:矢田 崇,東 照雄

発表論文等:

1) Yada, T., Nagae, M., Moriyama, S., and Azuma, T. (1999) Effects of prolactin and growth hormone on plasma immunoglobulin M levels of hypophysectomized rainbow trout, Oncorhynchus mykiss. Gen. Comp. Endocrinol., 115, 46-52.

2) Yada, T., Azuma, T., and Takagi, Y. (2001) Stimulation of non-specific immune functions in seawater-acclimated rainbow trout, Oncorhynchus mykiss, with reference to the role of growth hormone. Comp. Biochem. Physiol. B, 129, 695-701.

3) Yada, T., and Azuma, T. (2002) Hypophysectomy depresses immune functions of the rainbow trout. Comp. Biochem. Physiol. C, 131, 93-100.