過酸化水素水によるニジマス卵の水カビ病防除


[要約]ニジマス卵水カビ病の防除に従来使用されてきたマラカイトグリーンの代替薬として過酸化水素水の可能性を検討した。過酸化水素水1,000ppm,60分間の処理は卵の水カビ付着を抑制し,また,発眼率,ふ化率,奇形率にも悪影響を及ぼさず,実用に耐えうると考えられた。

山梨県水産技術センター・忍野支所

[連絡先]0555-84-2029

[推進会議]水産養殖

[専門]病理

[対象]他の淡水魚

[分類]普及・研究


[背景・ねらい]

 マラカイトグリーン(以下MG)はマス類受精卵の水カビ防除のために古くから使用されてきた薬剤であるが、水産用医薬品でないことをはじめ多くの問題が指摘されており、代替薬の開発が求められてきた。そこで、周辺環境への負荷が小さいとされる過酸化水素(以下H2O2)を用いて、種苗生産レベルに近いモデルを作りニジマス卵の水カビ防除の実用性を検討した。

[成果の内容・特徴]

(1)ニジマス卵に対して受精から発眼期までの2週間にH2O21,000ppm,60分間の処理を4回行い水カビの付着率,発眼率,孵化率,奇形率を調べたところ,いずれの結果もMGに遜色なく実用に耐えうると考えられた(表1)。

(2)サイフォンを使ってH2O2を注入した場合,濃度が設定よりも一時的に高くなった(図1)が,卵質への影響は認められなかった(表1)。

(3)従来の流水法による処理1回あたりのコストは,MGが約50円であるのに対し,H2O2では約3,100円と60倍も高価であった。

(4)このため,H2O2を加えた後止水で処理するとコストは約520円に下げられ,また,処理中の卵の酸素欠乏の恐れもないと考えられた(図2)。

[成果の活用面・留意点]

1.適用範囲・普及対象:ニジマス養殖業者

2.留 意 点:ニジマス以外のサケ科魚卵に対しては効果が異なる。

[具体的データ]

表1 水カビの防除効果と卵質への影響

図1 過酸化水素水の変化

図2 処理中の溶存酸素量の変化


[その他]

研究課題名:マラカイトグリーン代替薬の検討

予算区分:県単

研究期間:平成12年度(平成12年度〜)

研究担当者:山本 淳

発表論文等:

(1)山本 淳・芳賀 稔・畑井喜司雄.ニジマス卵の水カビ防除のための過酸化水素の可能性.平成12年度日本魚病学会秋季大会で口頭発表.

(2)山本 淳・豊村真之介・実吉峯郎・畑井喜司雄.過酸化水素によるサケ科魚卵の水カビ病の防除.魚病研究,36(4),241-246.