養殖マガキに存在する細菌の組成とその働き


[要約]養殖マガキにおける大量へい死原因の究明を目的に,消化管内の細菌の属組成や細菌数とその季節的変化を明らかにし,特に多かったビブリオ属については,種ごとの出現数の季節変化も明らかにした。また,血管内には,単一種の細菌が大量に存在するが,その病原性は弱いことを明らかにした。

広島県水産試験場 生産部

[連絡先]0823-51-2171

[推進会議]水産養殖

[専門]病理

[対象]かき

[分類]研究


[背景・ねらい]

 マガキは広島県の主要養殖種であり,その生産量は全国シェアの50%以上を維持している。しかし,夏から秋にかけて大量死が発生することが問題となっており,従来はその原因の一つが細菌感染症である可能性が指摘されていた。マガキ細菌叢の季節的変化に関する知見も少ないことから,2年間にわたりマガキの消化管内及び血管内に存在する細菌を季節ごとに調査し,大量死との因果関係について検討を行なった。

[成果の内容・特徴]

・マガキの消化管内の細菌数は1g当たり平均10万菌体であり,季節的な変動は認められなかった(表1)。また,属組成は,ビブリオ属細菌が40%を占め,ついでサイトファーガ属,モラクセラ属,アルテロモナス属及びシュードモナス属の順に多く,これら5属で80%を超えた。調査した2年間を通して,属組成に変動は認められなかった(表2)。

・消化管内細菌の40%を占めたビブリオ属については,夏と冬とでは種組成が異なることが明らかになった(表3)。

・20%程度のカキの血管内(血リンパ)に細菌が大量に存在していた。同一個体内の細菌叢は単一であったが,個体間には菌種の相違が見られ,ビブリオ属が45%以上を占めていた。それぞれの細菌(約1,000万菌体毎)を健康なマガキに注射したところ,死亡するマガキが少なかったことから,病原性は弱いと判断された。しかし,1億菌体を注射した場合は,1週間程度で死亡することも確認された。

・これらの調査の結果,大量へい死が細菌感染単独で起こる可能性は少ないと判断した。

[成果の活用面・留意点]

・この研究により,マガキ消化管内細菌の組成が明らかになった。今後,異常発生時の指標としての活用が期待される。また,異常マガキを検査する際には,血管内の細菌の有無を調査するのも有効な手法と思われる。

・マガキの大量死発生原因には不明の点が多いが,本調査結果では,ある種の細菌が単独でマガキを殺す可能性は低いと考えられる。ただし,マガキにとって不利な環境が発生し,体内である種の細菌が大量に増殖することにより,大量死が発生することもあり得ると考えられる。

[具体的データ]

表1 マガキの消化管内細菌数

表2 マガキ消化管内細菌の属組成

表3 マガキ消化管内細菌に存在するビブリオ属細菌の種組成


[その他]

研究課題名:カキ養殖体系再構築技術開発事業

研究期間 :平成10年〜12年

研究担当者:飯田 悦左

発表論文等:Bacterial Flora in the Digestive Tract of Cultured

Pacific Oyster.魚病研究,35(4), 173-177, 2000.