血球の発症段階を指標とする優良アコヤガイの作出


[要約]アコヤガイ大量死の対策として強い貝づくりに取り組み,血球の発症段階を指標として親貝を選抜する技術を確立した。この親貝を用いて生産した稚貝は,親貝の優良な形質を有しており,養殖現場で高率に生存して生育した。作出された優良なアコヤガイは,養殖業者から高い評価を受け,真珠産業回復の展望を開いた。

愛媛県水産試験場増殖室

[連絡先]0895-29-0236

[推進会議]水産養殖

[専門]水産遺伝育種

[対象]あこやがい

[分類]研究


[背景・ねらい]

 平成8年から全国でアコヤガイ大量死が発生し,愛媛県でも大きな被害(平成8年の被害額は183億円:愛媛県漁連)を被り,平成11年には,近年(平成3〜7年)と比べ,真珠母貝生産額および真珠生産額でそれぞれ15.6%(15億円),14.0%(40億円)にまで減少している。この対策として愛媛県水産試験場では,養殖研究所や関係県と連携をとりながら原因の究明や対策に取り組んでおり,この一環として優良なアコヤガイ作りに着手した。

 その結果,中国系の貝は死ににくいことが分かったが,日本のアコヤガイに比べて挿核が難しく,生産される真珠は照りや色目に問題があるため,日本で唯一の天然採苗生産域である愛媛県の内海で,天然採苗された貝から優良な親貝を選抜することとした。

[成果の内容・特徴]

1.アコヤガイ病状の探索

・アコヤガイの大量死は感染症と確認されており,病貝では白血球の増加と血球崩壊が顕著である。

・血球の崩壊に伴い,血球DNA鎖が断裂しDNA自体変性したことから,この損傷は活性酸素のようなラジカルによるものと判断した。

・病貝から過酸化脂質が検出され, 抽出した過酸化脂質の細胞毒性を確認した。

・病状の進行を血球の発症段階で判断できることを明らかにした(表1)。

2.親貝の選抜方法の開発

1)一次選抜

・養殖されている大量の母貝(採苗から1年以上経過した挿核されていない貝)から選抜する。

・外見(開口器で貝殻を開き観察できる外套膜や貝柱状態)により,痩せていない貝を選抜する。

・成貝約10万以上の個体から千個体程度を選ぶ。この貝を水温32℃で飼育し衰弱しない個体を数百個体選ぶ。

2)二次選抜

・閉殻筋からシリンジで採取した血球を観察し,病状が軽く病気に対する抵抗力のあるるものを選抜する。

・一次選抜した個体から,この方法で数十個体を選び出し親貝とする。

3.作出された優良アコヤガイの飼育成績

・平成13年は,冬期から夏期に水温が高く推移したため(病状の進行が早く死亡率が高くなる),天然貝の死亡率は50%前後の高い値となったが,作出した優良アコヤガイの死亡率は10%前後に留まった(表2)。

・病状の目安となる赤変化の度合も低く抑えられた(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1.親貝の選抜手法を普及し優良な親貝を確保することによって,優良アコヤガイの安定供給体制が確立され,真珠産業の回復を図ることが可能となる。

2.優良アコヤガイを地域の特産種としたいが,産業界から広く注目されており,すでに量産された優良貝から稚貝が生産されている模様である。

[具体的データ]

表1 軟体部に赤変化を伴う感染症によるアコヤガイ血球の発症段階

表2 母貝の累積死亡率

表3 閉殻筋赤変化


[その他]

委託元:独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所

研究課題名:水産生物育種の効率化基礎技術の開発

予算区分:アコヤガイの高生存系統作出技術開発

研究期間:平成9年度〜平成14年度

研究担当者:内村祐之

発表論文等:軟体部に赤変化を伴う感染症におけるアコヤガイ血球の応答,愛媛県水産試験場研究報告,9,7-13,2001.