トラフグ腸管内原虫症の感染経路


[要約]トラフグ養殖で問題となっているやせ症について,その主因と考えられる腸管に寄生する粘液胞子虫の感染経路を明らかにするため,経口及び同居感染試験を試み,腸管にみられる3種の粘液胞子虫のうち,2種について,淡水魚の粘液胞子虫で知られる貧毛類のような交互宿主を経た魚への感染ではなく,魚から魚への感染で起こることが明らかになった。

宮崎県水産試験場 増養殖部 養殖環境科

[連絡先]0985-65-1511

[推進会議]水産養殖

[専門]病理

[対象]ふぐ

[分類]研究


[背景・ねらい]

 平成7年頃から九州各地のトラフグ養殖場で発生したやせ症は大きな被害をもたらしている。宮崎県においても,平成8年頃から発生がみられ,休業・廃業する経営体が生じ,トラフグ養殖の存続が危惧されている。この疾病については,腸管に寄生する粘液胞子虫が主因とみられ,その感染経路について調査することが急務であった。

 トラフグ養殖ではしばしば,脱腸症状を示し,腸管を肛門からぶら下げて泳ぐ魚が観察され,これを他の魚がついばむことによって,魚から魚への感染が起こっていることが疑われたことから,経口的に粘液胞子虫の寄生した腸管を未感染魚に投与することで,感染が成立するかどうかについて検討を行った。

 さらに,感染魚に未感染魚を同居させることで,感染が成立するかどうかについても検討を行った。

[成果の内容・特徴]

(1)県内の養殖漁場から腸管にMyxidium sp.1及びMyxidium sp.2という2種の粘液胞子虫の感染したトラフグを採取し,県内種苗生産業者から購入した未感染トラフグにその腸管を細かく切って与えたところ,83日後に60%,122日後には100%の魚からMyxidium sp.1が検出された(表1)。

(2)経口感染試験によって感染したと思われるトラフグとアンカータグで標識した未感染トラフグを混養し,同居による感染を試みたところ,混養後63日後以降に採取したすべての魚からMxidium sp.1が検出された。また,検査した魚19尾のうち,9尾からはMyxidium sp.2が検出されるとともに,やせ症の発生が98日後以降8尾で確認された。やせ症の発生した8尾のうち,7尾にはMyxidium sp.2の寄生が認められ,やせ症の発症にMyxidium sp.2が関与する可能性が示された(表2)。

(3)(1)及び(2)の結果から,やせ症トラフグの腸管にみられるMyxidium属の2種の粘液胞子虫については,経口及び同居感染が成立することが明らかとなった。これは,現在までに生活史が明らかにされている淡水魚の粘液胞子虫が,魚から胞子となって交互宿主である貧毛類に取り込まれた後,放線胞子虫の形態で魚に感染するというサイクルとは異なる感染経路を持つことを明らかにしたものである。このことから,これらの粘液胞子虫が,交互宿主を経ずに魚から魚へ水平感染する可能性が示された。

(4)また,継続した(1)及び(2)の試験について,粘液胞子虫の感染時期には半年近くのずれがあると考えられるにも関わらず,やせ症の発症時期については経口感染試験魚と未感染の混養魚とで,それほどの差がないことから,やせ症の発症に水温が関与する可能性が示された(図1)。

[成果の活用面・留意点]

 腸管に寄生する3種のうち,Leptotheca sp.については,今回の経口感染試験のドナーに含まれなかったので,同様の実験感染が成立するかどうかは不明である。

[具体的データ]

表1 経口感染試験結果

表2 同居感染試験結果

図1 飼育水槽の水温変動(1998年10月〜1999年9月)


[その他]

委託元:魚病対策技術開発研究推進事業

     社団法人日本水産資源保護協会

研究課題名:トラフグのやせ症の防除・治療法に関する研究

予算区分 :国庫委託

研究期間 :平成9年〜11年度

研究担当者:安田広志,大山 剛,大木雅彦,岩田一夫

発表論文等:平成9〜11年度 魚病対策技術開発研究成果報告書