醤油麹を用いた魚醤油の製造方法と官能評価


[要約]スターターに醤油麹を用いてマルソウダ魚醤油を製造し、化学成分分析と官能評価を行い、市販製品と比較した。その結果、マルソウダ魚醤油の化学成分は市販製品の中で大豆濃口醤油に最も近く、官能的には風味が市販魚醤油より好ましく、大豆濃口醤油よりも弱いことが分かった。

富山県食品研究所

[連絡先]076-429-5400

[推進会議]水産利用加工

[専門]品質評価

[対象]他の泳魚

[分類]普及・研究


[背景・ねらい]

 最近、エスニックブームの影響で魚醤油の需要が増えているが、市販されている魚醤油の風味は一般的に受け入れにくい。これまでに魚醤油の風味を改良する目的で、阿部らは、ナンキョクオキアミを原料として醤油麹を用いて魚醤油を調製したところ、風味の良い魚醤油が調製できたことを報告している。一方、近年、マイワシ資源の減少、公海における漁業規制等に伴い、沿岸・沖合域での漁業生産量が低下しており、マルソウダ等の低・未利用水産資源の有効活用が重要な課題となっている。本研究では、マルソウダを原料にスターターに醤油麹を用いて発酵させた魚醤油を製造し、その品質を市販製品と比較した。

[成果の内容・特徴]

(1)冷凍したマルソウダを解凍後、内臓を除去し、肉晩機でミンチ肉とした。このミンチ肉に、醤油麹(麹菌にアスペルギルス・オリゼを使用)、食塩、水を加えてよく混合し、1トンタンク中で1年間常温発酵させたもろみを絞り、搾汁を火入れ後、連続遠心分離を行い、上清をボトル詰めした。

(2)マルソウダ魚醤油と市販製品の化学成分を比較すると、塩分、pH、全窒素分、無塩可溶性固形分、酸度などで他の市販魚醤油に比べ、大豆濃口醤油に最も近い性状であった(図1)。

(3)マルソウダ魚醤油の全窒素分や無塩可溶性固形分はJAS規格の大豆濃口醤油特級クラスのレベル以上であった(図1)。

(4)ウォード法によるクラスター分析を行うと、マルソウダ魚醤油は、市販製品の中で大豆濃口醤油に最も近いことが分かった(図2)。

(5)主成分分析を行うと、風味の嗜好性(第一主成分)の点で大豆濃口醤油と同レベルであり、他の市販魚醤油よりも好まれることが分かった(図3)。また、風味の強弱(第二主成分)の点でマルソウダ魚醤油の風味の方が、大豆濃口醤油よりも弱いことが分かった(図3)。

[成果の活用面・留意点]

 本研究で得られた醤油麹を用いた魚醤油の製造方法は、地域沿岸雑魚や水産加工残滓にも応用できる製造方法である。しかし、各地域に好まれる風味に合わせた麹や麹菌の選択、限外ろ過膜などの使用により製造後の保管中に生じる“おり”を除去することが必要である。

[具体的データ]

表1 醤油麹を用いて製造した魚醤油と市販魚醤油および大豆こいくち醤油の色と化学成分

図1 魚醤油と大豆こいくち醤油のクラスター分析による樹形図

図2 魚醤油と大豆こいくち醤油の主成分分析による散布図


[その他]

研究課題名:ソウダガツオを用いた新規食品素材の開発

予算区分:低・未利用水産物を用いた新規食品素材の開発

特定研究開発促進事業(水産庁)

研究期間:平成8年−12年

研究担当者:舩津保浩・鍋島裕佳子・川崎賢一

発表論文:舩津保浩・加藤一郎,多変量解析による魚醤油と大豆こいくち醤油の官能評価,日本水産学会誌,67巻2号,2001.

       舩津保浩,醤油麹を用いて製造した魚醤油の風味,日本食品科学工学会誌,49巻1号,2002,1−11.