マアジ肉のゲル形成能の季節変動の解明


[要約]長崎沿岸海域で漁獲されたマアジ肉のゲル形成能は,産卵期後である夏季に低く,産卵期前である冬季に高い季節的変動を示した。

長崎県総合水産試験場 水産加工開発指導センター 加工科

[連絡先]095-850-6314

[推進会議]水産利用加工

[専門]加工流通技術

[対象]あじ

[分類]普及


[背景・ねらい]

 1997年に長崎地方に水揚げされたマアジは約94,000トン,すなわち,全国の約30%を占め,ねり製品原料としても多用されている。しかし,マアジの加熱ゲル形成能は冬季には高いが夏季には著しく低下することが知られているものの,その詳細は不明である。そこで,長崎沿岸海域で漁獲されたマアジについて,一般成分ならびにねり製品化特性を明らかにし,それに対する晒処理の効果を検討することによって,マアジ製品の高品質化のための基礎知見とすることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

(1)マアジの生殖腺指数は,2−5月に高い値を示し,この時期が産卵期であると推定した。一方,肉中の粗脂肪含量は5−8月に高い値を示し,マアジの場合,粗脂肪含量の変動は産卵などの内的要因よりも,水温や餌料の多寡などの外的要因に支配されていると思われた。また,このような粗脂肪含量の変動は,直接的にはゲル形成能に影響しないことが,晒肉に対する回収脂質添加試験の結果から推定された。

(2)マアジ肉は年間を通して坐りやすく戻りやすい特性があった。加熱ゲルのゼリー強度は周年変動を示し,晩秋から冬季にかけての産卵期前は高く,産卵期後である夏季は低い傾向を示した。とくに,夏季には60〜70℃加熱時において著しい戻りが観察された。

(3)ゲル形成能の改善のために,2種類の異なる晒方法(清水晒およびアルカリ塩水晒)を検討した。いずれの晒処理も若干の坐り促進,および白度の向上において効果が認められたが,夏季のゲル形成能の低下を完全に抑制するには至らなかった。また,ゲル形成能を晒種類で比較すると,坐りの温度帯(40℃)では差は認められなかったが,戻りの温度帯(60℃)と調理加熱温度(90℃)においてアルカリ塩水晒肉が清水晒肉のゼリー強度よりも周年を通して高く,また,保水性も高かった。

[成果の活用・留意点]

・ 産卵期後である夏季にはマアジのゲル形成能が著しく低下すること,これを既存の晒処理では解決できないこと等が明らかとなり,マアジ肉の加工特性が明確に示された。

・ ゲル形成能の年間変動の著しいマアジの有効利用のためには,酵素製剤の利用・2段階加熱などゲル形成能向上のための方策についてさらに検討するとともに,塩干品などねり製品以外の加工品への利用についても検討する必要がある。

[具体的データ]

図1 長崎沿岸海域で漁獲されたマアジ肉糊の温度−ゲル化曲線

図2 マアジ落とし身および晒肉から調製した加熱ゲル性状の季節変動


[その他]

研究課題名 :加工原料調査研究事業

研 究 期 間:平成12年度

研究 担当者:大迫 一史

発表 論文等:大迫一史,山口 陽,清原 満(長崎水試),野崎征宣(長大水).「マアジ肉のかまぼこ形成能の季節的変動」.日本水産学会誌 67巻 2号 252-260 (2001).