河川一次生産力を基にしたアユの環境収容力推定法の開発


[要約]アユ付着藻類の相互作用を実験的手法によって明らかにし、従来の知見を基に付着藻類群落による河川一次生産力からアユの成長を推定するモデルを開発した。付着藻類群落は、アユの摂餌によって珪藻群落から糸状ラン藻群落に変化することが分かった。また、糸状ラン藻群落は、アユの個体密度が高い場合でも、枯渇することなく高い生産力を維持できることが分かった。アユは、付着藻類を摂餌することによって,自らの餌環境を改善しているものと考えられた。

水産総合研究センター 中央水産研究所 内水面利用部

[連絡先]0268-22-1721

[推進会議]内水面

[専門]漁場管理

[対象]あゆ

[分類]研究


[背景・ねらい]

 河川におけるアユの環境収容力を把握することは、生態系に及ぼす影響を考慮し、かつ効率的なアユ増殖事業を進める上で必要である。しかし、成長を考慮したアユの環境収容力を推定する方法はこれまでに確立されていない。本研究では、アユと餌となる付着藻類の相互作用を明らかにし、これまでの知見を基に付着藻類による河川一生産力からアユの成長を予測するモデルを開発した。

[成果の内容・特徴]

・アユの摂食により、付着藻類群落は珪藻群落から糸状ラン藻群落に変化することを明らかにした(図1)。

・木曽川および千曲川での調査の結果、アユの摂食圧が高い場所では、糸状ラン藻が優占すること(図2)、アユは糸状ラン藻を餌として利用していることが確認された。

・個体密度が高い時のアユの成長は、珪藻群落に比べ、糸状ラン藻群落を餌とした場合に良いことが確認された(図3)。

・アユの摂食圧が高い場合、珪藻群落の現存量および生産力は急激に低下するのに対し、糸状ラン藻群落は枯渇することなく高い生産力を維持できることが分かった。

・従来の知見を基に、アユの初期体重、個体密度および単位面積当たりの一次生産量からアユの成長を予測するモデルを作成した(図4)。

[成果の活用面・留意点]

 本成果は,学会および学術論文で公表されている。今後は、各河川において開発したモデルを適用し、本モデルの検証・改良を行う必要がある。本成果は、河川における環境収容力を考慮したアユ増殖事業に役立てられることが期待される。

図1 アユを収容した人工河川とアユのいない人工河川の底に発達した付着藻類群落の遷移過程

図2 千曲川・木曽川においてアユのハミアトがある(G)・無い(UG)場所で採集された付着藻類群落の種組成の比較

図3 人工河川(1-4)の底に発達した珪藻(□)および糸状ラン藻(■)群落を餌として飼育したアユの成長率の比較

図4 モデルによる各個体密度における90日後のアユ増重量予測


[その他]

研究課題名:アユ漁場における付着藻類群落の生産構造の解明

予算区分:経常研究

研究期間:1996〜2000年

研究担当者:阿部信一郎

発表論文等:

S. Abe, K. Uchida, T. Nagumo, T. Ioriya and J. Tanaka. (2001) Effects of grazing fish, Plecoglossus altivelis, on the species composition of freshwater benthic algal assemblages. Archiv fur Hydrobiologia 150: 581-595

S. Abe, T. Nagumo and J. Tanaka. (2001) Effects of current on the development of loosely and tightly attached layers in periphyton communities. Phycological Research 48: 261-265

S. Abe, O, Katano, T. Nagumo and J. Tanaka. (2001) Grazing effects of ayu, Plecoglossus altivelis, on the species composition of benthic algal communities in the Kiso River. Diatom 16: 37-43