阿武川における降海性アマゴ(サツキマス)の放流試験


[要約] 本県阿武川において,1995から5年間,降海性アマゴサツキマス)種苗の放流試験を行った。採捕個体の標識率から採捕された個体のほとんどが前年放流群と考えられた。1997〜1999年各年の放流種苗における翌年の回収率は,0.9〜1.8%であった。

山口県水産研究センター内海研究部

[連絡先]083-984-2116

[推進会議]内水面

[専門]魚介類繁殖

[対象]さけ・ます類

[分類]研究


[背景・ねらい]

・本種は,県内一部河川で漁獲されており,釣り愛好者も多い

・阿武川漁協から放流の要望があり,その放流効果を把握する目的で試験を実施した

[成果の内容・特徴]

・阿武川で1995〜1999年の5年間,毎年11〜12月に孵化後約1年,全長約200mmのサツキマス種苗(降海性アマゴ)約2000尾を放流し,追跡調査を行った

・1995年種苗は全個体無標識,1996年種苗は約1/3に脂鰭カット標識,1997年種苗は大部分の個体に脂鰭カット標識,1998年種苗は全個体脂鰭カット標識,1999年種苗は全個体無標識で放流した

・追跡調査は,主に放流翌年の3〜5月に行い,前半2か年は刺し網,後半3か年はルアーによる釣獲を主体に採捕調査を行った

・採捕個体は,形態的特徴により,非銀化型のparr型,銀化型のsmolt型,parr-smolt型,satsuki-parr型,satsuki型の5タイプに類型化した

 前半2か年は,ほとんど採捕されなかった。1998年調査で32尾,1999年調査で22尾,2000年調査で17尾の採捕が確認された(図1図2図3:測定個体のみプロット)

・この3か年の採捕個体の標識率(脂鰭カット)は,1998年約72%,1999年100%,2000年0%で,これらの標識率から採捕個体のほとんどが前年放流群と見なされた

・1997〜1999年放流群の翌年の回収率は,0.9〜1.8%であった

・採捕個体は,全長230〜400mm,体重90〜725gで,1〜6月の間では採捕時期が遅いほど大きい傾向であった

・採捕個体の大部分が雌で,雄は1尾だけであった

・採捕個体のうち,satsuki型の過半数が空胃であったが,その他の大部分の個体が水棲昆虫のほかシロウオ,アユ稚魚,ヨシノボリ等の小魚をかなり捕食していた

・放流後,採捕されるまでの放流種苗の動向については,ほとんど調査しなかった

・各タイプの出現状況から,非銀化型のparr型は河川残留群,銀化型のparr-smolt型及びsmolt型は降河又は降海前の個体,satsuki-parr型及びsatsuki型は一旦降河又は降海し,成長した後再遡上してきた個体と推定された(図4−1図4−2

・1998〜2000年採捕個体の全長と体重の関係について,回帰式を求めた結果次式が得られた(図5)   Y=2.880E-07X3.635   (Y:体重,X:全長,n=39,r=0.975,p<0.001 )

[成果の活用面・留意点]

・前半2か年の放流種苗は,非降海性思われる非銀化型が大半であった

・後半3か年の放流種苗は降海性と思われる銀化型の割合が増加し,放流翌年の採捕率が向上した。

・このため,放流種苗のsmolt化率を向上させればさらに高い放流効果が期待される

・採捕個体の多くが,アユ稚魚,シロウオなど重要魚種をかなり捕食していた

・本来,本県日本海側は本種の生息域ではなく,近年生態系の混乱が問題視されている

・放流する場合は,これらの点についても考慮する必要がある

[具体的データ]

図1 1998年調査における採捕時期と全長凡例

図2 1999年調査における採捕時期と全長凡例

図3 2000年調査における採捕時期と全長凡例

図4-1 1998〜2000年調査における採捕時期と全長の関係凡例

図4-2 1998〜2000年調査における採捕時期と体重の関係凡例

図5 1998〜2000年採捕個体の全長と体重凡例


[その他]

研究課題名:重要生物増殖実験開発事業(平成7〜10年度)

        内水面重要生物増殖試験事業(平成11〜12年)

予算区分:県単

研究期間:平成7〜12年度

研究担当者:大橋 裕

発表論文等:山口県水産研究センター研究報告1号掲載予定