MVPによる黒潮続流中層の観測


[要約]黒潮続流中層へ亜寒帯水が流入する様子をMVPによる詳細観測によりとらえた。亜寒帯水の流入は、黒潮続流が蛇行し南東へ流れているところで局所的に起こっており、深いところほど亜熱帯側に流入している構造を持っていた。

中央水産研究所 海洋生産部 変動機構研究室

[連絡先]045-788-7648

[推進会議]中央ブロック

[専門]海洋構造

[対象]

[分類]研究


[背景・ねらい]

 本州東方の海域では、親潮を起源とする亜寒帯水が黒潮続流を横切って亜熱帯循環の中層へ流入する現象が見られる。この現象は、亜熱帯循環域中層の塩分極小水(北太平洋中層水)の形成過程と考えられており、亜寒帯循環と亜熱帯循環との間の熱・物質循環において重要な役割を果たしている。この流入の過程を調べるため、走航式自動連続鉛直観測システム(MVP:Moving Vessel Profiler)により黒潮続流中層の詳細観測を行った。MVPは、観測船を航走させたままCTD観測を行えるシステムであり、約3浬毎という詳細な観測を比較的短時間で行える新しい海洋観測測器である。このMVPを用いることにより、黒潮続流中層に流入している亜寒帯水の詳細な構造を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

・2001年5月25日から6月9日にかけて本州東方海域の図1のような黒潮続流を横切る測線において中央水産研究所蒼鷹丸でMVPによる水温・塩分の詳細観測を行った。船速約5knotでのMVP観測により水温・塩分の水深1000mまでの鉛直構造が約3浬毎に得られ、図2のような詳細な断面分布が把握された。

・MVPの断面観測を行う直前に従来のCTD観測を行って、データの比較を行った。水温では約0.01℃の精度で一致する。しかし、MVPは自由落下式であるためセンサの降下速度が約3m/secと、通常CTD観測で行われる約1m/secの降下速度に比べてかなり速くなっているため、塩分については水温との時間応答差によるノイズがかなり出る。CTDのデータから補正を行ってノイズを除去すれば約0.003psuの精度が期待できる。

・断面図を見ると、黒潮続流の上流から蛇行の峰にあたる143E(測線4)までは黒潮続流の中層に亜寒帯水はほとんど流入していない(図2a)。その少し下流の黒潮続流が南東向きに流れている測線6で亜寒帯水の流入が見られる(図2b)。そしてさらに下流の蛇行の谷に近い測線11では黒潮続流中層に亜寒帯水が見られるが、黒潮続流の北側に分布する亜寒帯水とは分断されている(図2c)。このことから亜寒帯水の黒潮続流中層への流入は、黒潮続流の蛇行の峰のすぐ東の所(測線6の近傍)で局所的に起こっていて、そこから下流に中層を亜寒帯水が流されているものと考えられる。また、流入地点より下流では亜寒帯水が必ず見られることから、流入はこの時期においては定常的に行われていると考えられる。

・測線6での亜寒帯水の分布を見ると、深いところの方がより亜熱帯側に流入していることが分かる。これは亜寒帯水流入の機構と関係していると思われる。

[成果の活用面・留意点]

 本研究により黒潮続流中層への亜寒帯水流入の様子が詳細に把握された。これは、北太平洋中層水の形成などによる亜寒帯循環と亜熱帯循環との間の熱・物質交換を見積もるのに重要な役割を果たす。ただし、1回の観測だけでは構造の変動が不明であるので、さらに観測を継続する必要がある。

[具体的データ]

図1 観測点図

図2a 塩分断面図(図1における断面4)

図2b 塩分断面図(図1における断面6)

図2c 塩分断面図(図1における断面11)


[その他]

研究課題名:北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究

予算区分:科技振興調整費

研究期間:平成13年度(平成9年度〜13年度)

研究担当者:川崎清、小松幸生、廣江豊

発表論文等:

廣江豊・小松幸生・安田一郎・並木義則、「MVPによる黒潮続流での中層水観測」、2001年度日本海洋学会秋季大会講演要旨集、p.47.

Y. Hiroe, I. Yasuda, K. Komatsu, K. Kawasaki, T. M. Joyce, F. Bahr, Transport of North Pacific Intermediate Water in the Kuroshio-Oyashio Interfrontal Zone. Deep Sea Research (accepted)