マハタの種苗量産化の成功と人工種苗の市場性の確認


[要約]新しい魚類養殖用の魚種として、高級魚であるマハタ種苗量産技術開発に取り組み、今年度10万尾以上の種苗量産に成功するとともに、平成11年度産マハタの養殖試験および試験出荷をおこない、人工種苗の市場性を確認した。

三重県科学技術振興センター水産研究部尾鷲水産研究室

[連絡先]05972-2-1438

[推進会議]中央ブロック

[専門]飼育環境

[対象]魚類

[分類]研究


[背景・ねらい]

 マハタは東京,新潟の南日本からインド洋に分布し,全長1m以上に達する大型のハタ科の魚類である。主として釣りや底びき網で漁獲され,高級魚として取り扱われている。本種の養殖もすでにおこなわれているが,ほとんどが韓国等から輸入された天然種苗に依存しているため,輸入量も変動が大きく,種苗の安定供給のために人工種苗の大量生産が望まれている。しかし本種の生態についても不明な点が多く,種苗生産や養殖に関する知見も少ない。

 三重県では,マダイ養殖に替わる新しい魚種の開発を目的として、平成8年度からマハタの種苗量産技術開発に三重県尾鷲栽培漁業センターと共同で取り組んできた。

[成果の内容・特徴]

(1)親魚の確保

 マハタが,成熟した雌となるには5年以上,性転換した雄となるにはさらに長い年月を要するといわれている。そのため,この研究を開始した時点では,まず大型の親魚を確保することから始めた。その結果約70尾の親魚を確保し,陸上水槽および海面生簀で養成している。なお親魚には個体識別をおこなうため,全個体にIDタグを装着してる。

(2)雄化試験

 ハタ科魚類は,初めは雌として成熟し,その後雄に性転換することが特徴であり,大型の雄親魚の確保が困難であった。そのため,独立行政法人養殖研究所と共同で雌親魚に雄性ホルモン(メチルテストステロン)を封入したチューブを体内に埋め込むことにより,短期間で性転換した雄を確保することができた。

(3)採精,採卵および人工受精試験

 マハタは水温が20℃前後となる5月中旬以降が産卵期とみられ,雌の腹部が大きくなってくる。しかし,陸上水槽内での自然産卵の報告例はこれまでない。そのため,カニューレによる成熟度調査をおこない,卵巣卵が過熟にならない時点でHCGを注射し,約40〜48時間後に採精,採卵して人工受精することで,1,000万粒以上の受精卵を得ることができるようになった。

 また,ウイルス性疾病対策として,PCR法による親魚のウイルスチェックをおこない,陰性の親魚のみから採精,採卵をおこなうとともに,飼育水槽に収容する前に,オキシダント海水による受精卵の消毒をおこなった。

(4)種苗生産試験

 マハタのふ化仔魚は全長が 2mm以下と小さいため,他の魚種よりも小型の生物餌料を大量に確保することが課題であったが,タイ国原産の小型ワムシを高密度培養することにより,安定して小型の生物餌料を得ることができるようになった。

 また,これまで飼育初期の浮上へい死による大量減耗が大きな課題であったが,飼育環境(植物プランクトンの飼育水中への添加,通気量,注水量,照明,加温)の改善および飼育水にフィードオイルを添加して水面に油膜を形成することにより,浮上へい死を防止することができ,生残率が2倍以上に向上した。

(5)養殖試験

 平成11年度に生産したマハタ種苗を用いて養殖試験をおこなったところ,平成13年 4月には平均全長40cm、体重1.0kgに成長し、試験的に市場出荷をしたところ、kg当りの単価で1,600円〜2,200円という、マダイ(600〜1,100円/kg)を大幅に上回る値段がつき、新しい養殖魚種として十分に市場流通することが明らかになった。

[成果の活用面・留意点]

(1) 種苗生産期間および養殖期間におけるウイルス性疾病の発症防止技術の開発を行い、マハタの種苗生産技術および養殖技術の安定化に努める。

(2) 海洋深層水を利用した閉鎖型循環濾過方式による陸上での魚類養殖技術開発の対象魚 として、研究を進める。

(3) 三重県尾鷲栽培漁業センターへの技術移転による、本格的な種苗量産・供給体制へと繋げていく。

[具体的データ]

表1 確保したマハタ親魚

表2 平成13年度マハタ人工受精結果

表3 平成13年度マハタ種苗生産結果

表4 平成11年度産マハタ試験養殖結果(三重県内S漁場)


[その他]

研究課題名:クエ,マハタ種苗量産技術確立事業

予算区分:県単 特定試験研究

研究期間:平成13年度(平成11年度〜平成15年度)

研究担当者:土橋靖史,独立行政法人養殖研究所,三重県尾鷲栽培漁業センター

発表論文等:クエ稚魚の自発摂餌行動(平成11年度日本水産学会春季大会口頭発表)

        マハタ仔魚の生残と開鰾に及ぼすフィードオイル添加の影響,マハタ雄性化のためのホルモン投与手法の検討(平成12年度日本水産学会春季大会口頭発表)

        クエ×マハタ交雑種の種苗生産(平成13年度日本水産学会春季大会口頭発表)