鹿児島湾におけるマダイの放流効果


[要約]人工種苗マダイ特有の鼻孔連結を指標として市場調査を実施し、放流マダイの混獲率回収率回収金額経済効果等を推定した。平成12年度調査における鼻孔連結魚混獲率は、鹿児島湾奥域で24.4%、湾央域で10.7%であった。平成3年度放流群の放流後9年間の回収率は9.0%、回収金額148百万円、経済効果8.1倍と推定された。

鹿児島県水産試験場 漁業部

[連絡先]099-226-6415

[推進会議]西海ブロック

[専門]増養殖技術

[対象]たい

[分類]行政


[背景・ねらい]

 鹿児島湾におけるマダイ栽培漁業の試みは、昭和49年に湾奥域で始まった。放流事業は大規模なものへと発展し、昭和55年からは湾内全域で100万尾以上の稚魚が放流されるようになった。鹿児島湾におけるマダイの漁獲量は昭和51年に一時71トンまで減少したが、放流事業の発展に伴って次第に回復し、平成3年には213トンとなった。このように、本湾においてマダイ資源の維持増大と持続的利用を図るためには、放流効果を明らかにすることにより漁業関係者の理解を得ながら放流を継続する必要がある。

[成果の内容・特徴]

・本湾におけるマダイの放流効果は、人工種苗マダイ特有の鼻孔連結を指標として市場調査によって把握されている。市場調査は、主に本湾で漁獲されるマダイの80%以上が水揚げされる鹿児島市魚類市場で、週2回の頻度で実施されている。

・平成1年から12年までの、市場調査魚における鼻孔連結魚の混獲率は、15.3〜73.5%と集計された。これは外海域の混獲率1.0〜7.4%と比べてはるかに高い(表1)。

・調査魚を、重量を基準に年齢分解した結果、本湾では1〜2歳魚が主漁獲対象であることが分かった。また、8歳以上の高齢魚もよく漁獲されている。

・平成3年度放流群の、放流後9年間の累積回収率は9.0%、累積回収重量74.7トン、総水揚げ金額(回収金額)1億4,770万円、総水揚げ金額と種苗放流単価(人件費及び設備費を除く)との比率は8.1倍と推定された(表23)。

・放流効果の定義は未だ曖昧である。本報告では、混獲率、回収率、回収金額、経済効果(経済的回収倍率)をその評価の基準とした。マダイを対象とした栽培漁業の事例のうち、その効果について経済的な側面まで詳しく評価されている例は少ない。加えて、本事例のように高い回収率と経済的回収倍率が推定されている例はまれである。

[成果の活用面・留意点]

・本成果は、放流効果の具体的推定例として、他海域・他魚種の栽培漁業を推進する上での重要な参考となっている。

・「責任ある栽培漁業」を推進するうえで放流効果の推定とその結果の積極的な公表は当事者の責務であり、本事例は十分その責任を果たしていると考える。

[具体的データ]

表1 鼻孔連結魚混獲率の推移

表2 湾内放流魚回収率推定結果

表3 平成3年度鹿児島湾放流マダイ累積回収状況


[その他]

研究課題名:西日本海域栽培漁業漁場資源生態調査〜地域展開促進事業調査

予算区分 :国庫補助・県単

研究期間 :昭和47年〜

研究担当者:野島通忠他(S47〜49)、椎原久幸他(S49〜S62)、川上市正他(H1〜2)、山口厚人(H3)、中野正明(H4〜8)、宍道弘敏(H9〜13)

発表論文等:

(1)鹿児島県水産試験場事業報告書(昭和47年〜)

(2)椎原久幸・野村俊文・松原中・神野芳久・瀬戸口勇・茂野邦彦:鹿児島湾におけるマダイの種苗放流.栽培技研9(1),39-62(1980).

(3)椎原久幸:鹿児島湾における種苗放流事業.つくる漁業(資源協会編)、農林統計協会、東京、540-554(1983).

(4)椎原久幸:鹿児島湾における放流の成果と問題点.マダイの資源培養技術(田中 克・松宮義晴編)、恒星社厚生閣、東京、106-126(1986).

(5)中野正明:鹿児島湾におけるマダイの栽培漁業.放流効果調査事例検討会 資料集、日本栽培漁業協会、8-13(2001).