第4回技術交流セミナー

揺動装置に関する質問

 これまで,揺動式海藻着生装置(揺動装置)について寄せられた質問とその回答をまとめました。


Q1 付着生物によって揺れにくくなることはないのですか?

A1 可動部は常に動いているので,付着生物がついて動きにくくなることはありません。また,試験地では,波の遮蔽域であっても,ときどき有義波高が1mを超える波浪があるため,たとえ動き難くなっても,激しく揺動することで揺動性能は回復します。


Q2 波浪が強いところではすぐに壊れるのでは?

A2 装置は強い波を受けると,受波板が水平になるまで傾いて,波力を極限まで減少します。このため,波力が非常に小さくなり,軸受の設計負荷量(面圧,すべり速度,PV値)はいずれも許容値の1/100以下でほとんど問題になりません。実際に茨城県平磯沖の外洋域で行った予備実験では,反転できない構造の試験装置であったため,着生基質が破損してしまいましたが,回転可能な構造であれば全く問題はなく,むしろ円盤がなくてもウニの侵入を防止でき,構造を単純化できるという利点があることがわかっています。
 かつてマリノベ-ション構想時代に多くの「装置物」が海中に投入され,短期間に破損し,「装置物は2,3年で壊れる」という考えが定着してしまいました。また,浮魚礁の耐用年数10年にみられるように,「動くものは壊れる」という考えもあります。しかし,それらの寿命が短くなっている主要な原因の一つは,波浪に伴い衝撃張力と擦れの発生を抑えられない構造になっているためで,それらを解決できれば寿命はずっと長くなるはずです。揺動装置は,それらの致命的要因が発生しない構造を要件として開発しており,従来の装置物とは異なります。
 しかしながら,揺動装置の耐久性の決定要因である軸受の寿命は,軸受と軸の微妙な製作精度,強度,表面形状などに依存するため,実用基を用いた耐久試験を行わない限り正確にはわかりません。早く試験をしたいところです。


Q3 海藻はどのくらい着生するのですか?

A3 現在,宮城県に設置している試験装置は,本来の揺動性能を発揮していないため,時々ウニの侵入を許し,着生した海藻が食害され,成体アラメの本数は設置後2年で14本程度に留まっています。本来の性能を発揮できれば,おそらく装置1基でアラメだけでも少なくとも20本, 30本くらいの成体が着生するはずです。アラメ成体の年間生産量では1.5~2kg湿重量/年/本を期待できますので,アラメだけで45~60kg湿重量/年/基となり,これにワカメ等の1年生海藻の生産も加えれば,年間生産量は少なくとも50kg湿重量/年/基になると試算されます。この量は,宮城県沿岸では,ロープによるコンブ生産量は10kg湿重量/m程度ですから,長さ5m以上のロープ生産量に匹敵します。


Q4 海藻が生えると,ウニが集まってその密度が増加してしまうのでは?

A4 キタムラサキウニは,装置に着生した海藻が伸びて海底に届くようになると,海藻の先端部を引っ張るようにして群がって食べますが,ウニが餌の存在を感知できるのはせいぜい1mくらいまでで,それよりも遠ければ餌を発見できず,蝟集することはありません。また,ウニは餌が食べられなければ,すぐに逸散してしまいます。このため,海藻が海底直上にあっても海底に届かなければ,蝟集することはなく,ウニの密度が高くなるのは,伸長した海藻が海底で捕捉できる時期に限られます。


Q5 装置が壊れたら,回収する必要があるのでは?

A5 コンクリートブロックであっても,最終的には壊れます。本装置も同様ですが,金属製ですので,プラスチックやコンクリートとは違い,いずれは海水に溶けてなくなります。アルミも鉄も天然海水に溶存態として存在する元素で,もちろん無害です。また,その比重は,たとえば軽金属のアルミであっても石材の2.65よりも大きい2.70ですので,壊れても海岸に打ち上がることはなく,岩と同じように付着生物がつく基質になるだけです。


Q6 海藻はどの部位に着生するのですか?

A6 海藻は揺動部のあらゆる部位に着生します。しかし,宮城県に設置している試験装置では大型海藻のアラメがよく着生していたのは,着生基質としたフレームの部分です。これは,アラメは受波板にも着生するのですが,たまに侵入してくるアワビやウニが付着しやすい受波板で,比較的容易に摂食活動できるために,食われてしまったためです。おそらく,試験装置が正常に機能すれば,受波板や軸にも海藻がびっしり着生するはずです。


Q7 装置は構造が単純で,簡単に出来そうですが?

A7 おっしゃるとおり,単純な構造ですが,実際作ってみると,意外と難しいことがわかりました。十分な揺動性能,効果,耐久性を得るためには,金属の溶接,材料の選定などで,注意すべき点や製作上のノウハウがあります。それらのことから,実用化には,詳しい製造行程を含めたマニュアル化が必要です。


Q8 1基どのくらいの経費がかかるのですか?

A8 使用する金属の価格によって変動します。最近,中国等で金属需要が急速に高まり,金属価格が高騰していますが,オールアルミ化によって耐食性,耐久性の優れた装置(下図)を12万円/基(平成20年5月現在)で製作できると試算しています。




Q9 海藻が繁茂し易い成分や物理的材質等を有する既存のコンクリートブロックがありますが、それと比べてどう違うのですか?

A9 栄養塩を溶出させて海藻の成長を促進させるような基質がありますが,それによってウニの磯焼け地帯で海藻を生やした例はありません。また,表面を粗くしたポーラスコンクリートブロックを用いてキタムラサキウニの磯焼け地帯でアラメの生育に2年間だけ成功した事例が谷口ら(2001)※から報告されています。しかし,その試験地である宮城県沿岸の岩礁(水深5m)は,揺動装置の試験を行った鮫浦湾よりも波の影響が格段に強い外洋域に位置し,そこでは波浪の影響だけでウニの食害が防がれ,アラメが水深4mまで生育しています。つまり,谷口らの試験地は元々ウニの摂餌活動がしにくい波浪環境で,あまり効果の高くないものでも海藻が生える可能性があると考えられます。しかし,そのような基質のみの工夫では,最初は海藻が着生しても,次第に着生が悪くなり,やがてウニの食害にあって消失してしまいます。事実,キタムラサキウニの磯焼け場で,3年以上にわたり,アラメの生育に成功している藻礁は見当たりません。
  ※谷口和也・山根英人・佐々木國隆・吾妻行雄・荒川久幸(2001)磯焼け域におけるポーラスコンクリート製海藻礁によるアラメ海中林の造林.日本水産学会誌67: 858-865


Q10 ウニの磯焼け地帯で中層延縄式ロープ施設を用いてコンブを生やした例がありますが,なぜそれを使わないのですか?

A10 中層延縄式ロープ施設は,コンブの種糸をロープに取り付けることで,毎年,安定して大量のコンブを生産できる実績を背景に,漁業者自らが出資して行っている海中造林としては大変珍しい技術です。ところが,過去に行った多くの試験の結果,当施設は,耐波性能がかなり低く,強い波浪を受けるところでは流失を防ぐことはできないことが明らかになっています。そのため,現在では湾奥部や漁港内などの波浪の非常に弱い遮蔽域でのみ利用されています。遮蔽域は当然,流動が弱いので,コンブの成長は悪くなります。また,毎年ロープを設置しなければならず,結構な手間と経費がかかる上に,海底から離れているロープに生えたコンブがどの程度有効に利用されているのかも疑問視されています。このため,その利用を止めてしまったところも少なくありません。揺動装置にはこれらの制限や問題はなく,激しい波浪が時々あるような岩礁に設置し,海底の直上に毎年,海藻を生育させることができます。


Q11 装置が小型で安すぎるので,規模をもっと大きくして公共事業で設置してはどうですか?

A11 装置が小型であるために,いくつもの利点があります。第一に,小型であるため,設置可能な場が増えます。岩礁では一般に海底が凸凹していて,平らな領域を確保するのが難しいため,装置を大型化すると,それだけ設置が困難になります。第二に,小型であれば,軽いため,大型のクレーン船は必要なくなり,設置費を削減できます。図1の装置の場合,重量は20kg程度(空中)です。第三に,小型のものを,間隔をあけて複数基配置する方が海藻の成長や漁獲効率の点で有利になります。高価なものを1基設置するよりも安価なものを多数設置し,面的に広がりのある優れた漁場を造成できます。


Q12 装置が揺れている映像はないのですか?

A12 現在,鮫浦湾に設置している装置については,正式な調査期間が平成15年度で終了しているため,残念ながら詳しい調査を実施できない状況にあります。目視では,揺動部が1分間に1,2回くらい±20度程度傾くのを観察しましたが,当装置は軸芯がずれて摩擦抵抗がかかっているため,なぎのときはほとんど動かず,動いてもその揺動は極めて不安定でした。




                    

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