プレスリリース

平成13年4月23日
独立行政法人水産総合研究センター
親潮域・混合域・黒潮続流域の共同集中観測について
~北太平洋中層水のトンネルを探す~


目的
 文部科技省科学技術振興調整費「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」(SAGE:Subarctic Gyre Experiment)の第2ワーキンググループ(主査 安田一郎東京大学助教授)は、本州東方の親潮域・混合域・黒潮続流域における北太平洋中層水の共同集中観測(図1)を行います。北太平洋中層水は、北太平洋中緯度域の中層に広がる低塩分で特徴づけられる水(図2)で、二酸化炭素の輸送や気候変動に重要な役割を果たすと考えられています。この北太平洋中層水は、亜寒帯起源(北太平洋亜寒帯やオホーツク海)の低温・低塩な水が、本州東方で亜熱帯起源(黒潮)の高温・高塩な水に混入し形成されていると考えられています(図3)が、その形成量や実際に黒潮続流を越えて亜熱帯域への流れ込む形態(トンネル)については未知のままでした。SAGEでは過去2回の集中観測(1996年春季と1999年秋季)によって、形成量の定量を行いましたが、今回の広域調査によって年々の形成量の変動を検証するともに、精密観測と中層フロートによって亜寒帯起源の水が亜熱帯域に流れ込む経路(トンネル)を明らかにすることを目的としています(図4)。


観測の概要
 本調査では、水産総合研究センターの蒼鷹丸,若鷹丸,北光丸,第三開洋丸(用船)と気象庁の高風丸,凌風丸が観測コア期間5月9日から7月6日(全期間4月20日から7月21日)の間に、図1の示す広域海洋観測を行います。この際、蒼鷹丸は日本初となるMVP(走航式自動連続鉛直プロファイルシステム:約10km間隔の水温・塩分を走航しながら観測)の広域調査を行い、亜熱帯水へ混入する亜寒帯水の詳細な挙動を調べます。また、蒼鷹丸,若鷹丸,北光丸はLADCP(垂下式音響ドップラー流速計)を用いて、中層の流れを直接測流し、中層水の流量を算出します。さらに、気象庁気象研究所の中層フロートを中層に投入し、中層水の実際の移動経路も測定します。


今後の予定
 調査後は、得られた海洋観測データをもとに、北太平洋中層水の形成量を算出するとともに、気象庁気象研究所および京都大学の数値モデル実験とあわせ、形成量の変動機構を解明していく予定です。


本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
研究推進部研究情報科 広報官 梅澤かがり TEL:045-788-7529
東北区水産研究所 企画連絡室長 小林時正 TEL:022-365-7196
 混合域海洋環境部 伊藤進一 TEL:022-365-9928