プレスリリース
独立行政法人水産総合研究センター
-マリンサイレージの開発と海の堆肥技術について-
[要 旨]
農業では、ワラや雑草を堆肥化して利用しています。また、畜産では,牧草をサイロ内で乳酸発酵させて飼料(「サイレージ」といいます。)として利用しています。これらは資源を循環して利用する環境調和的なシステムです。 これと同じことを海でもできないかと考えたのが,マリン(海藻)サイレージです。
まず海藻を発酵させる能力を有する複数の微生物を海藻試料から分離し、これらを組み合わせて海藻を乳酸発酵させる技術を新たに開発しました。さらに,海藻を酵素分解し二枚貝や海産微小動物のエサとして利用できる粒子(単細胞性のデトライタス粒子)に変換する技術を開発し,このふたつの技術を組み合わせることによって,サイロの中で乳酸発酵をおこさせながら同時に海藻を単細胞化していくことに成功し,マリン(海藻)サイレージと名付けることとしました。
微生物を組み合わせて使用することは,すでに生ゴミの堆肥化など陸上の技術には利用されていますが,海藻など海の素材を利用することに焦点を絞り、微生物を分離した例は初めてであり利用価値は極めて高いと考えられます。
また,マリンサイレージで作られる海藻の発酵産物は直径が約5μmで植物プランクトンとほぼ同じ大きさであるため、二枚貝や海産微小動物のエサとして利用することが期待されているほか,
①大量安定供給が可能である。
②光、温調、エアレーション等一切の光熱供給を必要としない。
③保存性が良い。(室温下で1年以上)
の特徴があり,特許技術として出願しているところです。
将来的には,近年富栄養化した沿岸域で大量発生しているアオサの処理対策として、海岸にサイロを設置し、この中でアオサを粒子に変換し、そのまま浜に戻すことによって、アサリ等の有用水産物へのエサとして機能させるようなしくみへと発展させることも考えられます。マリンサイレージの開発により、このような"海の堆肥技術"ともいうべき概念が生まれ、循環型食糧生産システムが構築されるものと期待されるでしょう。
独立行政法人 水産総合研究センター
広報官 梅澤かがり TEL:045-788-7529
中央水産研究所 企画連絡室長 中野 広 TEL:045-788-7601
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