プレスリリース

平成13年6月15日
独立行政法人水産総合研究センター
苦いウニ卵巣から苦味の原因である新規含硫アミノ酸を発見


[要 旨]
 私たちが食べている国内産ウニは,バフンウニ,エゾバフンウニ,キタムラサキウニ等があります。その中で最も美味で高級なバフンウニが,北海道道南地方では犬も食わないまずいウニ「イヌガゼ」,えぐ味のあることから「ニガガゼ」とよばれており,東北地方以北ではほとんど漁獲されていません。漁獲されないバフンウニは,海藻を食い尽くし磯やけを引き起こす原因となるため漁場への影響が心配されているところです。「この苦味原因物質は何なのか」。独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所利用化学部素材化学研究室では,福島県水産試験場からの相談を受け研究を進めました。
 ウニの可食部は生殖巣(卵巣・精巣)で,私たちは普段これらを区別することなく口にしています。
 福島県いわき市の海岸で採集したバフンウニに官能検査を行い苦味の有無を調べたところ,この苦味は成熟した雌の卵巣にだけ特有なものであることがわかりました。
 成熟した個体から卵巣を集め,苦味物質を単離し,この化合物が今まで知られていない含硫アミノ酸であることを突き止めました。そこでこの物質をバフンウニの学名にちなんでpulcherrimine(Pul)と命名しました。
 さらに,定量方法を開発しこの方法を用いて卵巣中のPul量を測定したところ,官能検査による苦味の強さとPul含量との間に有意な相関関係があることがわかりました。また,精巣ではPulは発見されませんでした。結論としては,バフンウニの苦味は成熟した卵巣に特異的に発現し,その原因はPulであることを解明しました。
 今後は,新たに開発したPulの定量方法を用いて,Pulの発現と卵巣の成熟度の関係,Pulの発現と餌の関係,Pulの発現と水温の関係等を調べ,発現機構を解明することによって,漁獲されていないバフンウニの苦味を除去する技術開発がすすめられるものと考えます。


本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
広報官 梅澤かがり TEL:045-788-7529
中央水産研究所 企画連絡室長 中野 広 TEL:045-788-7601
  利用化学部 素材化学研究室 村田裕子 TEL:045-788-7657