プレスリリース

平成14年1月7日
独立行政法人水産総合研究センター
第3回有明海漁場環境調査の実施について


[要 旨]
 平成13年度行政対応特別研究「有明海の海洋環境の変化が生物生産に及ぼす影響の解明」の一環として、平成14年1月12日~16日に独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所は、漁業調査船「陽光丸」による有明海漁場環境調査を実施する。
 この調査は、有明海における水温、塩分、クロロフィル、溶存酸素、懸濁物等の漁場環境の潮汐及び季節に伴う変化を詳細に把握するための計3回(平成13年7月及び10月実施、平成14年1月実施予定)の同様の調査の第3回目として行われる(別紙)。


本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
研究担当 西海区水産研究所 企画連絡室 酒井保次、皆川 恵 TEL:095-822-8158
広報担当 研究推進部 研究情報科 広報官 梅澤かがり TEL:045-788-7529


別紙
有明海漁場環境調査の概要

1.調査の背景・目的
 ①これまでの調査で比較的手薄であった有明海の長軸に沿った中央水域(図1、SA1~SA8)及び湾奥西部(図1、G0~G7,G9,G10)の漁場環境(水温、塩分、クロロフィル、溶存酸素等)を詳細に把握し、データの充実を図る。
 ②有明海の生産力を評価するための基礎資料となる植物プランクトンの光合成活性及び基礎生産量を有明海湾奥西部(図1:SA4, G1, G3, G9)において、測定する。


2.調査計画
  調査日時:平成14年1月12日~16日
  調査海域:有明海湾口から湾奥部にかけての18点(図1、SA1~SA8、G0~G7,G9,G10)
  調 査 船:独立行政法人水産総合研究センター
       西海区水産研究所漁業調査船「陽光丸」(499トン)
  調 査 員:独立行政法人水産総合研究センター
       西海区水産研究所 研究員4名
  調査内容:1)気象、海象(気温、風向、風力、気圧、波浪)
         2)漁場環境(水温、塩分、濁度、クロロフィル、溶存酸素等)
         3)プランクトン調査(口径45cm、網目幅100μmのプランクトンネットで 動物プランクトンを採集し、種組成等を分析する)
         4)生産力調査(現場法による基礎生産量及び光合成活性測定)
 調査点SA4, G1, G3, G9では基礎生産量を現場法により測定する。また、漁場環境については全観測項目ともCTDを用いて、表層から底層まで0.5~1m毎に鉛直的に連続測定を行う。調査点SA1~SA8では調査期間中各地点1回ずつ漁場環境を観測する。また、調査点SA4及びG0~G7,G9,G10では漁場環境を3日間繰り返し測定し、調査期間中の変動を把握する。


3.得られたデータの活用
 得られた漁場環境データは今年観測されている他の調査データとともに、昨年度あるいは平年のデータと比較し、今年度の漁場環境の特徴を季節毎に把握するために利用される。また、基礎生産量及び植物プランクトンの光合成活性データは、ノリとの栄養塩の競合関係にある植物プランクトンの栄養塩摂取能力を評価するための基礎資料として利用される。


[用語の解説]
CTD:
 海洋観測に通常よく使用されている調査機器で、塩分、水温、水深を同時に測定することができる。なお、今回使用するCTDには濁度、クロロフィル、溶存酸素を測定する機能がついている。

現場法による基礎生産量測定:
 光が到達している層から採取した海水に標識された炭素 (13C)を加え、透明な瓶に封入して採取した層に1昼夜吊し、その間に植物プランクトン等により固定された標識炭素の量から固定された全炭素量(基礎生産量)を算出する。




 図1 調査地点
 SA1~SA8:表層から底層まで0.5~1mごとに各点1回ずつ漁場環境を観測する地点
 G0~G7,G9,G10:各点表層から底層まで、漁場環境を毎日1回3日繰り返し観測する地点