プレスリリース
独立行政法人水産総合研究センター
シンポジウム「藻類及びろ過食動物の増養殖」開催について
〔要 旨〕 「天然資源の開発利用に関する日米会議」(UJNR)の第31回水産増養殖専門部会日米合同会議のシンポジウムが、10月16日から2日間の日程で中央水産研究所で開催される。シンポジウムには20名の米国参加者を迎え、藻類やろ過食動物(貝類等)の増養殖が環境の浄化に役立つ実例が紹介され、今後の研究のあり方が討議される。
〔説 明〕
日米両国は、昭和39年に「天然資源の開発利用に関する日米会議」(UJNR:US-Japan Conference on Development and Utilization of Natural Resources)を設置し、経済・社会の発展及び福祉の向上のみならず、人類の平和と繁栄のために、資源・エネルギー、食料、環境等の諸問題を解決するため、17の専門部会と一つの調整委員会を設け、活発に活動を続けてきた。(独)水産総合研究センター養殖研究所に事務局を置く水産増養殖専門部会では、両国の水産増養殖分野の研究交流の一環として、研究者交流、情報交換、共同研究を推進し、合同会議(事務局会議、シンポジウム、現地検討会、サテライト・シンポジウム)を両国において交互に開催してきた。
本年は、我が国が開催国であり、10月16日~17日に(独)水産総合研究センター中央水産研究所(神奈川県横浜市)でシンポジウムを開催する。本年度のシンポジウムは「藻類及びろ過食動物の増養殖」を共通テーマとし、ノリ類(海藻)やアサリ類(貝類)の増養殖が、食料生産とともに海の環境浄化に役立っている実例が紹介され、増養殖を環境の保全にも役立てるために今後必要となる研究のあり方が討議される。(別紙参照)
独立行政法人 水産総合研究センター
本部 業務企画課 広報官 梅澤かがり TEL:045-788-7529
養殖研究所 企画連絡室長 中添純一 TEL:0599-66-1830
養殖研究所 企画連絡科長 小西光一 TEL:0599-66-1830
別 紙
2002年10月16日~17日
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所(横浜市金沢区福浦2-12-4)
シンポジウム総括:黒倉 寿 (東京大学),古谷 研 (東京大学)
企画責任者(日本)關 哲夫(養殖研究所),日向野 純也(養殖研究所)
企画責任者(米国):(コネチカット大学)
開催趣旨
大型藻類,微細藻類及びろ過食動物(プランクトンフィーダー)は,沿岸海域の栄養塩循環と水質維持に大きな役割を果たしている。二枚貝等のろ過食動物は海中の懸濁物を大量にろ過・摂食することから,海水浄化に貢献する生物群として,近年その生態学的機能が見直されている。二枚貝の養殖は無給餌で行われるため,その生態系の中へ余分に有機物を投入しないので,海の食物連鎖の中において,最も効率的なタンパク質供給を可能にするものとして期待される。一方で,日本沿岸に生息する産業上有用な二枚貝は減産の一途を辿っている。例えばアサリの漁獲高はこの十年間で急激に減少している。またカキでは鞭毛藻類による貝毒も問題である。さらにタイラギ資源は大量へい死により,壊滅的打撃を受けている。二枚貝類資源の回復のためには,これらに対する原因究明が早急に行われる必要がある。
大型・微細藻類は高い栄養物質吸収能による環境維持機能を持つ他に,ノリ,コンブ,ワカメの様に早く成長するものは重要な増養殖の対象種となっている。しかしながら,これらの生産現場では生育環境の富栄養化あるいは悪化により産業が様々な問題に直面している。
このような状況を受けて,藻類や二枚貝の資源回復・増産を図り,沿岸の水産業を振興すると共に環境の改善・回復を図ろうとする気運が高まっている。本シンポジウムでは,資源減少要因の分析と共に生態系が機能している場と悪化している場との比較を通して,問題解決に向けた方向性を示すと共にそのための今後の研究課題を見出したい。また,互いに異なる背景を抱えながら増養殖技術を培ってきた日米両国間で藻類及びろ過食者の増養殖の持続的発展に寄与するための共通の展望を論議し,今後の研究交流の糧としたい。
プログラム
平成14年10月16日(水) 13:00~17:30
開会の挨拶
13:00 松里 寿彦(養殖研究所)
基調講演
13:10 海藻と貝類:日本の沿岸漁業と環境におけるその重要性
黒倉 寿(東京大学)
米国の増養殖の概要
13:15 米国の増養殖の概要
Charles Yarish(コネチカット大学)
1.藻類及びろ過食動物の増養殖の現状
14:00 広島湾におけるカキ養殖の現状と問題
平田 靖・赤繁 悟(広島県水産試験場)
14:25 東京湾における近年のアサリ資源の減少について
鳥羽光晴(千葉県水産研究センター)
14:50 ギンザケ養殖場における底棲動物の集合分布に関与する環境条件
佐々木 良(宮城県気仙沼水産試験場)
15:45 干潟における環境変化が二枚貝のろ過と呼吸に与える影響
日向野純也(養殖研究所)
2.栄養リサイクル技術としての養殖
16:10 富栄養沿岸域の水質に対するろ過食性二枚貝群集の影響への考察
Roger Newell(メリーランド大学)
16:35 富栄養湾域における微生物還と二枚貝養殖への役割
神山孝史(東北区水産研究所)
17:00 海面養殖の物質収支バランス - 外洋における魚類と二枚貝の複合養殖
Richard Langan(ニューパンプシャー大学)
平成14年10月17日(木)9:00~17:30
9:00 炭素固定源としての海藻類資源
村岡大祐(東北区水産研究所)
9:25 海藻及び貝類増養殖漁場における環境収容力
古谷 研(東京大学農学部)
3.今後の増養殖発展のために必要な突破口
(1) 持続的増養殖のための技術的,生物学的な支援
9:50 ノリ類の新規遺伝子導入法の開発
Thomas Chen(コネチカット大学)
10:45 二段階複合養殖法におけるオゴノリ類(Gracilaria parvispora)の成長
Erin Ryder(アリゾナ大学)
11:10 米国北東部種及びアジア種のノリによる生物学的環境修復と海面養殖の可能性
George Kraemer(ニューヨーク州立大学パーチェス分校)
11:35 海産魚種苗生産における微細藻類Nannochloropsis oculataの新しい役割
岡内正典(養殖研究所)
13:20 紅藻(Chondracanthus exasperatus)の集約的複合養殖
Robert Waaland(ワシントン大学)
(2)生物学的環境修復技術の活用
13:45 干潟の経済価値-潮干狩りの費用対効果
玉置泰司(中央水産研究所)
14:10 三河湾における貧酸素水塊発達抑止のための干潟と浅海の大規模再生
鈴木輝明(愛知県水産試験場)
14:35 基礎生産と二枚貝養殖における陸地利用の影響評価のための内湾収容力モデルと流域負荷モデルの結合
Mark Luckenbach(バージニア海洋科学研究所)
15:00 沿岸域における環境の変化?増養殖・環境再生に向けたろ過食者の選別と増殖へのチャレンジ
Roger Mann(バージニア海洋科学研究所)
4.総合討論
16:00~17:20
閉会の挨拶
17:20 James P. McVey(米国シーグラントオフィス)
(注)本シンポジウムは英語で行われる。
本シンポジウムの参加には登録が必要であるため事前に事務局に問い合わせてください。
事務局
(独)水産総合研究センター 養殖研究所 TEL 0599-66-1830