プレスリリース
独立行政法人水産総合研究センター
[要 旨]
平成14年度行政対応特別研究「有明海の海洋環境の変化が生物生産に及ぼす影響の解明」の一環として、2月15日~19日に独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所は、同研究所所属の漁業調査船「陽光丸」による有明海漁場環境調査を実施する。
この調査は、有明海における水温・塩分・溶存酸素、懸濁物、プランクトン等の漁場環境を詳細に把握するため実施される(別紙)。
独立行政法人 水産総合研究センター
研究推進部 業務企画課 広報官 梅澤かがり TEL:045-788-7529
西海区水産研究所 企画連絡室長 芦田勝朗 TEL:095-822-8158
別 紙
養殖漁場の海水は残餌や排泄物等で悪化しがちであり、環境だけでなく結果として養殖魚に大きな負担かけており、これを如何にしてクリアするかが重要課題の一つとなっている。今回、養殖場の海水中の懸濁粒子に付着する細菌群集に着目し、その有機物分解活性とその群集構造を2001年3月から1年間調査した。
1.調査概要
調査日時:平成15年2月15日~19日
調査海域:有明海湾口から湾奥部(図1~3)
調査機関:独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所
漁業調査船「陽光丸」(499トン)
2.調査の目的・内容
(1)漁場環境調査
①広域環境調査
有明海の長軸に沿った中央水域(図1、●印)及び湾奥部(図1▲印)の漁場環境(水温、塩分、濁度、クロロフィル、溶存酸素等)を詳細に把握する。このため、各地点1回ずつCTD(用語の解説参照)を用いて、表層から底層まで0.5~1m毎に鉛直的に連続観測を行う。
③底質環境の変化を把握するため、有明海湾奥部の定点(図2)で採泥する。
(2)プランクトン生産調査
有明海の生産力を評価するための基礎資料となる植物プランクトンの光合成活性及び基礎生産量を、湾奥西部(図3)において擬似現場法(用語の解説参照)により測定する。
また、動物プランクトンの摂餌量を測定する。
なお、気象、海象観測(気温、風向、風力、気圧、波浪)を全ての調査で実施する。
3.得られたデータの活用
得られた漁場環境データは他の調査データとともに、昨年度あるいは平年のデータと比較し、今年度の漁場環境の特徴を把握するために利用される。また、基礎生産量及び植物プランクトンの光合成活性データは、ノリとの栄養塩の競合関係にある植物プランクトンの栄養塩摂取能力を評価するための基礎資料として利用される。
〔用語の解説〕
CTD:
海洋観測に通常使用される調査機器で、塩分、水温、水深を同時に測定することができる。なお、今回使用するCTDには、濁度、クロロフィル、溶存酸素を測定する機能が付いている。
擬似現場法による基礎生産量測定:
光が到達している層から採取した海水に標識された炭素(13C)を加え、透明な瓶に封入して光を調節した水槽に1昼夜収容し、その間に植物プランクトン等により固定された標識炭素の量から固定された全炭素量(基礎生産量)を算出する。
添付図