プレスリリース
独立行政法人水産総合研究センター
【要旨】
独立行政法人水産総合研究センター(以下「水研センター」という。)開発調査部では、昨年度に引き続きニュージーランドスルメイカ(Nototodarus sloanii)を対象として、いか釣調査による分布状況、生物学的諸特性、回遊並びに資源構造に関する情報を収集するためにニュージーランドのイカ類ITQを管理する組織であるSquid Fishery Management Company Ltd.(SFMC)と共同調査を平成16年1月13日~4月30日までの間行うこととした。
当該調査の実施に関しては、日NZ両国政府の協力のもと外交ルートを通じて同組織と協議を行い、平成15年11月28日にウェリントンにおいて、水研センター開発調査担当石原理事とSFMC理事長のRichared Cade氏との間で覚書に調印した。
平成15年1月~4月にニュージーランドの南島の東側大陸棚からチャタムライズにかけて3航海・延39定点(過去の調査結果に基づき設定)で海洋観測及び操業調査を実施したが、ニュージーランドスルメイカの漁獲は全体的に非常に低調であった。また、当該資源の地理的分布や豊度は年変動が大きく、主たる産卵盛期が1月またはそれ以前であることが示唆された。
今年度は、①ニュージーランドスルメイカの地理的分布、外套背長、成熟度、胃内容物等の生物特性及び移動経路に関する知見を収集するとともに、②地理的分布と海洋環境の関係を把握し、③ニュージーランドEEZ内におけるいか釣漁場の開発の可能性について検討することを目的とし、ニュージーランド南島の東側及び南側水域にて調査を行う。また当該種の分布域全体の漁獲状況について前年度との比較を行う。
独立行政法人 水産総合研究センター
本部 総合企画室 広報官 飯田 遥 TEL:045-788-7529
開発調査部 開発調査1課長 小河道生・開発調査1課調査員 山下秀幸 TEL:03-3265-8301
用語の説明
1.ニュージーランドスルメイカ
ニュージーランドの北島北岸及び西岸を除くニュージーランド全域に分布する。
1970年代初め頃より日本のトロール漁船及びいか釣り漁船によって漁獲されるようになった。かつては、毎年70隻以上の我が国の大型いか釣漁船が出漁していたが、近年では資源状態の悪化などから漁獲量が減少し、2001/2002年漁期の1隻を最後に暫くの間我が国の大型いか釣漁船の入域はなかった。ニュージーランド周辺で漁獲されるスルメイカ類では主として本種とオーストラリアスルメイカの2種類がある。
2.ITQ
個別譲渡可能漁獲割当量
ニュージーランドでは漁業種類毎に魚種別のTACが定められている。TACを個々の漁業者に割り振ったものが個別割当(IQ)であるが、この個別割当を自由に売買できるのがITQ制である。
3.EEZ
Exclusive Economic Zone(排他的経済水域)
図・写真
1.調査水域
2.ニュージーランドスルメイカ
3.SFMCと調印後の記念写真