プレスリリース

平成16年6月11日
独立行政法人水産総合研究センター
ニュージーランドとのイカ資源に関する共同調査の結果概要


要 旨
 独立行政法人水産総合研究センター開発調査部では、平成15年に引き続きニュージーランドスルメイカ(Nototodarus sloanii)の漁場の再開発を目的として、ニュージーランドのイカ類ITQを管理する組織であるSquid Fishery Management Company Ltd.(SFMC)との共同調査を平成16年1月13日~4月30日までの間3航海にわたって実施し、いか釣操業調査により当該種の分布状況、生物学的諸特性並びに回遊に関する情報を収集した。
 調査の結果、ニュージーランドスルメイカを256.6トン漁獲し、253.4トンの製品を生産しており、前年に比べると生産量は4.5倍に達した。特に南島南岸のスチュワート島周辺水域においては、2月下旬以降調査終了まで持続する好漁域が確認された。また、これ以外にもダニーデン沖、オークランド島周辺、ベリアンバンクの各水域においても局所的、短期的に好漁を得た。これらのうちベリアンバンク水域では、調査情報に基づき当業船3隻を当該水域に誘引し、操業するに至った。好漁域の表面水温は水域により異なっていたことから、水域別に表面水温を指標とした魚群探索を行い得る可能性が示唆された。以上の知見のほか、水域別の外套長組成、成熟状況、胃内容物等に関する情報を収集した。調査期間中の1操業日当たり生産量は2.5トンであり、当業船の平均的な採算分岐金額から算出した1日当たり必要生産量3.8トンを下回ったが、今回得られた知見に基づき適切な漁場選択を実行することで企業化の可能性があると思われる。



本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
広報官 飯田 遙 TEL:045-788-7529
開発調査部 開発調査1課長 小河道生
開発調査部 開発調査1課調査員 笹尾 信 TEL:TEL:03-3265-8301


用語解説

1.ニュージーランドスルメイカ
 ニュージーランドの北島北岸及び西岸を除くニュージーランド全域に分布する。1970年代初め頃より日本のトロール漁船及びいか釣り漁船によって漁獲されるようになった。かつては、毎年70隻以上の我が国の大型いか釣漁船が出漁していたが、近年では資源状態の悪化などから漁獲量が減少し、2001/2002年漁期の1隻を最後に暫くの間我が国の大型いか釣漁船の入域はなかった。ニュージーランド周辺で漁獲されるスルメイカ類では主として本種とオーストラリアスルメイカの2種類がある。
 両種とも、外形は日本近海のスルメイカによく似ているが、頭足がやや大きい。丸いか、つぼ抜き等の形で水揚げされ、日本のスルメイカと変わりなく、各種の製品に加工されている。

2.ITQ  個別譲渡可能漁獲割当量
 ニュージーランドでは漁業種類毎に魚種別のTACが定められている。TACを個々の漁業者に割り振ったものが個別割当(IQ)であるが、この個別割当を自由に売買できるのがITQ制である。

操業風景写真
第8白嶺丸写真
地理的分布図