プレスリリース

平成16年8月6日
シロクラベラの量産化に目途!-沖縄の三大高級魚の一つ-
独立行政法人水産総合研究センター
八重山栽培漁業センター
(説明資料)

成果の概要

1.背景
 シロクラベラ(学名:Choerodon shoenleinii)はベラ科イラ属に属し,最大で全長1m,体重10kg以上に達し,ベラ科ではメガネモチノウオ(別称:ナポレンオンフィッシュ)についで大きくなる魚です。沖縄本島以南から西部太平洋の珊瑚礁域に分布し,貝類,甲殻類およびウニ類などを好んで食べる雑食性とされています。
 シロクラベラは沖縄県内ではマクブーと呼ばれ,白身で美味なことからハマダイ,スジアラと並んで3大高級魚の一つとして珍重されています。近年その漁獲量は減少傾向にあり,沖縄県では資源管理に必要な生態調査等を行うとともに,資源回復の手段としての種苗放流や養殖対象魚種としての可能性などの面から,種苗生産の技術開発を早急に行う必要がある魚種として挙げられています。独立行政法人水産総合研究センター八重山栽培漁業センターでは,地域のニーズに応えるため,平成12年から本種の親魚養成と種苗生産技術の開発に取り組んできました。


2.概要
 本種は,他のベラ類と同様に雌性先熟型の性転換を行います。天然魚では,雌雄は大きさと体色で判別することが可能で,雌(写真1)は全長45cm以下で体色は青味がなく全体が黄緑色を呈します。全長40cm前後から性転換が始まり,65cmを超えると全てが雄(写真2)になり体全体が青色に変わります。
 今回の親魚養成試験に供した親魚は,石垣島内の追い込み網漁業者に依頼して,平成12年に36尾および平成15年に17尾を入手しました。親魚の大きさは,平均全長39.2cm(25.5~68.5 cm),平均体重1.6kg(0.4~6.4 kg)で,屋内の八角型コンクリート製110kL水槽に収容して養成しました。
 収容した親魚には,まず冷凍アジの切身と活アサリで餌付けを行いました。これらの餌に付いた後は,ビタミン剤(給餌量の5%)を添加した冷凍アジ等の魚およびイカの切身を週に3回与えました。また,週に2回は,殻付の冷凍アサリを与えました。給餌量は,1日当たり魚体重の4%を目安にしました。養成中の親魚の健康管理として,毎月1回水槽替えを行い,成長の測定と寄生虫駆除のための淡水浴を行いました。
 本種は上記したように雌性先熟型の性転換を行うことから,種苗生産に必要な卵を安定的に確保するためには雌雄の確実な判別と雌雄の組み合わせが必要となります。このためまず雌雄を判別する方法について検討し,ついで最適な雌雄比を明らかにするための試験に移行しました。平成13~14年は天然魚での性比判定法に基づいて,サイズと体色で雌雄を判別しましたが,長期養成した個体ではこの判別法が利用できないことが明らかになりました。このため,平成15年からは直径3.5mmのチューブを取り付けた注射器で,生殖孔から直接生殖腺組織の一部を採取し,卵の状態と精子の有無から雌雄を判別(生検法)しました。
 雌雄比の試験では,雄では腹部を軽く圧迫した時に精子を放出するような成熟個体1尾に対して,6尾程度の大型の雌(全長45~62cm)との組み合わせで自然産卵させることが最適であることが分かりました。その結果,総浮上卵数は目視で雌雄を判定した平成13~14年は2.1~17.8万粒でしたが,生検法で雌雄を判定した平成15年は28.6万粒,さらに平成16年には105.3万粒と大幅に増加しました。
 産卵試験で得られたふ化仔魚を用いて飼育試験を行ったところ,平成13年は平均全長約30mmの稚魚を約3,000尾(平均生残率6.4%),平成15年は平均全長23mmの稚魚を約8,000尾生産(平均生残率50%以上)できました。平成16年は,1~5月までの長期間にわたって合計67回の採卵ができました。そのため,全長23mmの種苗を約6万尾生産(平均生残率47.0%)することに成功し,種苗量産の可能性が開けました。
 生産した稚魚は水槽内で物陰に隠れる習性が観察されていることから,珊瑚礁の発達した亜熱帯島嶼域での放流に適した習性を持った魚種であると考えられます(写真3)。また,種苗生産時の生残率が高く,ネットなどによる取り揚げ時のハンドリングに極めて強いこと,共食いが全く観察されないことなどから,養殖にも適した魚種であることが分かりました。


用語の説明

【シロクラベラ】(写真1~3)
 シロクラベラ(学名:Choerodon shoenleinii)はベラ科イラ属に属し,ベラ科ではメガネモチノウオ(別称:ナポレンオンフィッシュ)についで大きくなる魚で全長1m,体重は最大で10kg以上に達する。分布は沖縄本島以南から西部太平洋域。生息場所として,仔稚魚は藻場,成魚では珊瑚礁域。本種は雌性先熟型の性転換を行い,雌は45cm以下の個体で体色は青味がなく全体が黄緑色,雄は全長40cm前後から出現し,65cmを超えると全てが雄に性転換し,体全体が青色に変色する。本種の天然海域での食性は貝類,甲殻類,およびウニ類などを好んで食べる雑食性とされている。

【雌性先熟】
 ベラ類やハタ類などでは,ある一定の年齢(大きさ)までは先に雌として成熟し,ある時期に到達すると雌から雄へと性転換を行う。このように,雌が先に成熟し,後から雄へ性転換することを雌性先熟と称する。