プレスリリース

平成16年9月30日
水産海洋データベースの公開を開始
(説明資料)

1.水産海洋データベースの公開
 水産総合研究センター中央水産研究所は科学技術振興機構(JST)との共同研究により水産海洋データベースを開発し、10月1日より公開します。  データベースの利用者としては主に水産分野、海洋分野の研究者を想定していますが、昔の報告書や海洋図などの画像、漁獲量の変遷を作図する機能なども含んでいますので、我が国の水産業に興味関心をお持ちの一般の方にも利用していただけるものと期待しています。


 データベースの名称: 水産海洋データベース 略称: JFODB
 英名: Japan Fisheries Oceanography* DataBase
 公開ホームページURL:http://jfodb.dc.affrc.go.jp**
 * Fisheries Oceanography:水産海洋学
 **農林水産研究計算センターの設備を利用

図1 水産海洋データベースのトップページ



2.水産海洋データベースの開発の経緯
 科学的なデータに基づき、海洋環境や水産生物の長期変動についての研究を進め、地球温暖化などの地球環境変化が海洋環境・海洋生物に与える影響を理解することは、我が国の周辺水域における水産資源の持続的な利用を進めるための基盤として重要です。そのため、過去の調査データを遡って解析することが重要な課題となっています。
 我が国の水産研究は100年を超える歴史を持ち、その中心的な役割を担ってきた水産研究所には多くの観測資料が蓄積されています。しかしながら、1960年代はじめまでの調査データのほとんどは電子化されることなく印刷物や調査原票のままに保管され、研究への利用が難しい状態にありました。
近年、地球温暖化が事実として認められるに至り、これらのデータの電子化と公開を求める声が高まり、マイワシのように数十年の時間スケールで変動する水産資源の研究を行っている中央水産研究所にとっても緊急の課題となっていました。このため、中央水産研究所では、JSTの平成13年度の「研究情報データベース化事業」を利用し、今年9月までの約3年の期間をかけて開発を実施しました。


3.水産海洋データベースの概要
 水産海洋データベースの開発においては、はじめに水産研究所に保管されている海洋環境・海洋生物調査資料(調査原簿や大正・昭和期の印刷物)を可能なかぎり掘り起こして整理し、紙の劣化による情報の逸失を防止するため画像データを作成しました。20万枚に及ぶ資料の画像ファイルを作成し、ホームページ上で閲覧できるようにしました。次に、これらの資料から、必要な数値データの電子化を進め、HPから検索しダウロードできるようにしました。資料の量が膨大であるため、電子化は全てを網羅するには至っていませんが、海洋環境データの主要な部分、魚体測定データ、卵稚仔調査データをデータベース化しています。


4.データの収録状況
海洋環境データ:水温・塩分など
定地観測データ 12万件 1921~1984年
 1910年代から、全国各地の燈台などに委託して、5日毎に沿岸での海水温、密度、気象状況の観測を実施し、データをまとめていました。戦前には当時日本の統治下にあった朝鮮半島や台湾においても実施されていました。この観測は戦後になり次第に縮小していきましたが、中央水産研究所には、1980年代半ばまでの報告資料が保存されています。全体では100を超える観測点の資料が保存されていますが、本事業では観測期間が長期に亘る39観測点のデータの電子化を行いました。また水温と気温の月平均値データセットをダウンロードすることができます。


定線観測データ 70万件 1918~1993年
 大正7年(1918年)以降、各都道府県の水産試験研究機関の協力の下に全国各地の沿岸から沖合に向けて伸びる観測ラインを設定して、定期的に海洋調査が実施されるようになりました。その観測結果をもとにして月毎に海洋図(水温分布図)が作成され、また調査データは定期的に海洋調査要報として公表されていました。水産海洋データベースには1918年から1950年までの海洋調査要報に収録された調査データが収録されています。1951年と52年のデータは水産庁の発行した海洋観測資料により電子化を行いました。なお、海洋調査要報掲載のデータの一部は日本海洋データセンターにより電子化されていたため、そのデータも併せて収録しました。1953年以降のデータのうち、1963年から1993年までの水産試験研究機関の海洋観測データは電子化済みのものがあり、本データベースにも形式を合わせて収録しました。1953年から1962年までのデータについてもまもなく利用可能になる予定です。


海洋生物系データ
卵稚仔・プランクトンデータ 12万件 1949~1988年
 戦後、マイワシ資源の減少が明らかになり、その資源変動要因の究明のためイワシ類を対象とした組織的な水産資源調査が開始されました。その一環として調査船によりマイワシ産卵海域等で卵・稚仔魚・プランクトンの定量採集および海洋観測が継続して行われてきました。水産海洋データベースには中央水産研究所に大量の保管されているこれらの産卵調査に係わる観測資料を収録しました。


魚体測定データ 35万件 1936~1994年
 マイワシやサンマ、マサバなどの資源状態を判断する上で魚の体長や体重、生殖腺重量、年齢等の魚体測定データが重要な基礎データとなっています。そして水産資源評価の基礎調査として多くの魚体測定データが蓄積されています。しかしながら、計算機の発達する以前のデータ解析は手作業で行われ、使用されたデータは帳票のままに保存されていました。このため本事業では、電子化可能な資料を調査収集し、戦前の北海道から東海地区における調査結果、戦後のイワシ資源調査で実施された調査結果、西海区水産研究所にて収集された魚体測定表のデータを電子化し、データベースに収録しました。


漁獲量データ
 121魚種について1894年から2001年までの漁獲量データを収録しました。グラフ表示機能により漁獲量の変遷を調べることができます。


5.ホームページの利用
 水産海洋データベースのホームページにて利用できる機能は以下のとおり。
 1)データ検索:海洋環境データ、海洋生物データを調査時期、海域等で検索し抽出することができる。
 2)ダウンロード:年別、観測地点別に整理された海洋環境データファイルを直接ダウンロードすることができる。
 3)資料集:収録された資料の画像を閲覧できます。資料として重要な大正から昭和前半に発行された海洋図や海洋調査要報も含みます。
 4)グラフ・図集:各沿岸定地観測点の水温、気温データの季節変化、経年変化をグラフにすることができる。
   また、魚種毎に漁獲量の長期変化をグラフに示すことができる。


6.今後の展開
 水産研究所にまだ残されている過去の海洋環境及び海洋生物に関する資料の整備とデータベース化作業を継続実施するとともに、最新の調査データのデータベースへの収録を進め、水産海洋データベースを利用したデータ公開を推進する予定です。


7.利用例
 1)海洋図*の閲覧  1930年代の黒潮大蛇行期の海況と漁況


 黄色で示したのは黒潮の流路の推定位置、丸囲みは黒潮周辺のカツオ漁獲位置。大蛇行の発生にともない漁場が沖合に形成されることを示す例。
*海洋図には各県の水産試験場や水産研究所の観測によって得られた観測データを元に作成された表面水温水平分布図と漁況図とその月の海況と漁況の解説が記載されている。大正9年から昭和32年までの間にほぼ毎月発行された。


 2)漁獲量データのグラフ化
  漁獲量の年々の変遷を簡単にグラフ化し確認することができる。


 赤のラインはイワシ類の合計の漁獲量、青のラインは総漁獲量を示しています。