プレスリリース
独立行政法人水産総合研究センター
独立行政法人水産総合研究センター(以下「水研センター」という。)では,ニュージーランドいか釣漁場の再開発を目的として,NZのイカ類ITQ(個別譲渡可能漁獲割当量)を管理する組織であるSquid Fishery Management Company Limited(SFMC)と共同で,平成16年12月2日から平成17年5月4日までの期間に,NZ200海里水域におけるスルメイカ類に関する調査を行うこととした。本調査は,日NZ両国政府の協力のもと外交ルートを通じて同組織と協議を行うことにより旧海洋水産資源開発センターであった平成14年度から毎年実施しているもので,本年度調査については,平成16年10月14日に横浜の水研センター本部にて,川口恭一理事長とSFMCのCEO,Richard Cade氏との間で覚書に調印した。
昨年度の共同調査では,ニュージーランドスルメイカ(Nototodarus sloanii)を対象とした調査を行い,NZ南島沖のスチュワート島周辺水域で持続性のある漁場を確認するなど企業化に繋がる有益な知見を得た。1日あたりの漁獲量は,いか釣漁業の推定採算分岐金額見合いの数量には達しなかったが,今後,漁場形成に関する知見をさらに蓄積し,その知見を積み重ねることによって企業化は可能と判断された。
本年度の共同調査では、対象種にオーストラリアスルメイカ(N. gouldi)を追加したことに伴い,調査水域をこれまでのNZ東側水域からNZ東西両水域に拡張するほか,調査期間を1か月延長することで合意した。このため、本年度ではニュージーランドスルメイカを対象として漁場形成に関する知見の蓄積を図り,NZ EEZ内におけるいか釣漁場の開発を図る一方で,新たに対象としたオーストラリアスルメイカを加え,同様のねらいのもとで調査を行うこととしている。
独立行政法人 水産総合研究センター
総合企画室 広報官 飯田 遥 TEL:045-227-2624
開発調査部 開発調査1課長 小河道生・開発調査1課調査員 笹尾 信 TEL:045-227-2729
用語の説明
1.ニュージーランドスルメイカ(英名New Zealand southern arrow squid, 学名Nototodarus sloanii)
NZ周辺に分布するスルメイカ類の1種。本種はNZ周辺全域に分布し,かつては南島東岸を中心に漁獲されていた。
1970年代初め頃より次のオーストラリアスルメイカとともに日本のトロール漁船及びいか釣り漁船によって漁獲されるようになった。最盛期には毎年70隻以上の我が国の大型いか釣漁船が出漁していたが,近年では他海域に出漁するなどにより,出漁船が減少し,2002/2003年漁期には入域船がなくなっていた。スルメイカ類は1年生であるため、資源の年変動も大きく最新の資源動向の把握を行うことによって、企業化の可能性を探ることが出来る。
2.オーストラリアスルメイカ(英名New Zealand northern arrow squid, 学名Nototodarus gouldi)
ニュージーランドスルメイカとともにNZ周辺に分布するスルメイカ類の1種。本種はNZの西岸からオーストラリアにかけて分布し,かつてはNZ西岸において漁獲されていた。
3.ITQ
個別譲渡可能漁獲割当量
ニュージーランドでは漁業種類毎に魚種別のTACが定められている。TACを個々の漁業者に割り振ったものが個別割当(IQ)であるが,この個別割当を自由に譲渡できるのがITQ制度である。
4.EEZ
Exclusive Economic Zone(排他的経済水域)
図・写真
・調印後の記念写真
(左:SFMCのCEO:Chief Executive Officer,Richard Cade氏,右:水研センター川口理事長)
・共同調査実施水域
・平成15年度調査の様子