プレスリリース
平成17年10月26日
独立行政法人水産総合研究センター
独立行政法人水産総合研究センター
大型クラゲ洋上駆除実証試験調査の結果について(速報)
【要旨】
水産総合研究センターは、大型クラゲ対策の一環として、9月29日~10月16日までの間、①表中層トロール網を用いた大型クラゲ洋上駆除試験および②電子標識を用いたクラゲの行動調査等を日本海において実施したところです。このうち、①の結果概要(速報)を下記のとおりお知らせします。
(1)表中層トロール網の後端部に格子状に組んだステンレスワイヤーを配列することにより、入網したクラゲのほぼ全数を細かく切断できた。
(2)実際の洋上駆除を想定した曳網実験から、格子状に組んだステンレスワイヤーを配列した大型クラゲ切断部が実用性の高い構造であることを確認した。更にコッドエンド(網の末端部)最後端に取り付けたステンレス製ワイヤーを格子状に張った鉄製の円形枠を取り外しても、大型クラゲの切断効果が損なわれないことが判明した。この円形枠を取り外すことにより、船上での取り扱いがより容易になるばかりか、安全性もより一層向上することが期待される。
(3)今回の実験に用いた表中層トロール網は既存の網を改良して行ったことから、沖合域の駆除については、既存の網を改良することによっても実施が可能である。
(4)水中ビデオカメラによる観察により、沖合域において大型クラゲは40m以浅、特に30m以浅に多く分布していることが判明した。このことから、大型クラゲの駆除を行うには、表層から40m程度までの水深を曳網することが有効である。
なお、②の調査結果については、電子標識が浮上し、データの回収が可能となる11月上旬以降にプレスリリースを実施する予定です。また、併せて当センターが去る10月6日に行った本調査の中間報告のプレスリリースもご参照ください。
本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
本部 総合企画部 広報官 皆川 惠 TEL:045-227-2624
水産工学研究所 漁業生産工学部長 小田健一 TEL:0479-44-5941
独立行政法人 水産総合研究センター
本部 総合企画部 広報官 皆川 惠 TEL:045-227-2624
水産工学研究所 漁業生産工学部長 小田健一 TEL:0479-44-5941
別 紙
1.目 的
大型クラゲは近年頻繁に大量出現し、漁業に大きな被害を与えている。大型クラゲによる漁業被害を軽減するための技術開発の一環として、我が国沿岸に来遊する大型クラゲを洋上において駆除するための曳網の開発を行う。
2.調査海域等
(1)調査機関(担当研究所):
独立行政法人水産総合研究センター(水産工学研究所)
(2)調査海域:
日本海を中心とする大型クラゲ大量来遊海域(特に、若狭湾沖から能登半島西方の水深500m以深の海域)
(3)調査期間:9月29日~10月16日
3.調査船:第7開洋丸(499トン、1,600馬力)
4.調査結果
(1)表中層トロール網を用いた大型クラゲ洋上駆除試験
①大型クラゲを細かく切断できるように、ステンレス製ワイヤーを40cm間隔の格子状に張り、これを5列並べたコッドエンド(網の末端部)と切断されたクラゲを回収するカバーネットを装着した表中層トロ-ル網(クラゲスイーパー)を用いて、延べ15回、合計時間375分間の曳網試験を行い、切断された大型クラゲを5383kg採集した。
②次に、実際の洋上駆除を想定し、カバーネットをはずしてこの網のコッドエンドを開き、曳網時間を長くした操業試験により、ワイヤーにクラゲが詰まらず、スムーズに切断できるか調べた。併せて、クラゲがワイヤーによって切断されることを確認するため、水中ビデオカメラによる観察を行った。延べ6回、合計時間468分間の曳網を行い、水中ビデオカメラでの観察結果から、格子状のワイヤーによって少なくとも300個体以上の大型クラゲを細かく切断した。
③これらの結果から、格子状にしたステンレス製ワイヤーを列状に配置することにより、実用的な大型クラゲ洋上駆除網の製作が可能となった。
(2)水中ビデオカメラによる大型クラゲの分布水深の確認
水中ビデオカメラを用いて大型クラゲの遊泳水深を観察した。その結果、大型クラゲは40m以浅、特に30m以浅に多く分布していることが判明した。
5.今後の展望
今回の洋上駆除試験から、格子状にしたワイヤーをトロール網に列状に張ることにより、大型クラゲを細かく切断できることやこの網の実用性が高いことが確認された。沖合域においては既存の表中層トロール網を改良することにより、比較的容易に洋上駆除が可能であるが、沿岸域については、今回開発した技術を応用して小型漁船で操業可能な駆除漁具の開発を図る必要があり、早急に対応していきたい。