プレスリリース

平成17年11月24日
独立行政法人水産総合研究センター
沖合底びき網(2そうびき)を対象とした
大型クラゲ除去網の実証化試験について


【要旨】
 独立行政法人水産総合研究センターでは、日本海西部海域において、沖合底びき網漁業(2そうびき)を対象に、生産コストの削減、漁労作業の省力化等を目的とした調査を実施しています。その一環として、曳網中に大型クラゲを効果的に除去しながら操業することが可能な底びき漁具の実証化に一応の目処がついたので、その概要をお知らせします。なお、実証化試験に用いた大型クラゲ除去網の構造は、鹿児島大学水産学部と島根県水産試験場、島根県機船底曳網漁業連合会、島根県漁業協同組合連合会等が共同で開発したものを使い、初めて漁船で実証化したものです。



1.通常の底びき網を使用した場合には大型クラゲの入網により操業1回当たりの曳網時間の短縮を余儀なくされていたが、上記大型クラゲ除去網を使用した場合には、操業1回当たりの曳網時間が大幅に増加し、ほぼ通常操業が可能となった。
2.除去網の使用により、主対象魚種であるカレイ類、タイ類はコットエンド内に保持され、通常網による通常操業と同等の漁獲効率が得られた。
3.今回の実証化調査により、当該除去網の実用化に一応の目途がついたものと考える。今後、速やかに当該成果の当業船への周知を図るため,関係漁業者向けの資料を作成し、配布する。

本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
本部 総合企画部 広報官 皆川 惠 TEL:045-227-2624
本部 開発調査部 開発調査1課長 小河道生 TEL:045-227-2729


別紙
沖合底びき網(2そうびき)を対象とした
大型クラゲ除去網の実証化について

1.目 的
  日本海西部海域における沖合底びき網漁業では、平成14年、15年と連続して大量に発生した大型クラゲの入網により操業が妨げられ、単価が高いカレイの生産が減少する等の被害があった。この調査では、大型クラゲの入網による生産金額の減少を防ぐために、曳網中に入網した大型クラゲを除去する漁具の実証化を行うことを目的とする。(別図

2.調査海域等
(1)調査機関(担当)
   独立行政法人水産総合研究センター(開発調査部)
(2)調査海域
   日本海西部海域(別図
(3)調査期間
   8月16日~11月18日

3.調査船
  第1、2やまぐち丸(60トン、735.5kw(1,000馬力))(別写真

4.調査項目
(1)大型クラゲの排出比率の確認
   クラゲが排出される箇所にカバーネットを装着して、カバーネット及びコットエンド内に溜まったクラゲの重量を把握し、排出されたクラゲの排出比率を確認した。
(2)漁獲物の排出比率の確認
   上記カバーネット及びコットエンド内に溜まった漁獲物の重量を把握し、漁獲物の排出比率を確認した。
(3)操業時間の確認
   網を装着した場合と通常の場合の曳網時間の確認を行った。

5.調査結果の概要
(1)大型クラゲの排出比率の確認
   装着したカバーネット内及びコットエンド内にたまったクラゲの重量を計測した結果、大型クラゲの排出量は入網量の50.5%となった。
(2)漁獲物の排出比率の確認
   主対象魚種であるカレイ類、タイ類はほぼすべてがコットエンド内に保持され、通常網による通常操業と同等の漁獲効率が得られた。
(3)操業時間の確認    除去網を装着した場合、操業1回当たりの曳網時間が2時間と通常網と同等の操業が可能となった。なお、通常の操業では、大型クラゲの入網に起因し30分程度の曳網時間であった。

6.成果の利活用
 今回の実証化調査により、当該除去網の実用化に一応の目途がついたものと考える。今後、速やかに当該成果の当業船への周知を図るため,関係漁業者向けの資料を作成し、配布する。
 なお、今回実証化に成功した除去網は、通常網からの改造に要する費用は10~15万円である。