プレスリリース

平成18年8月3日
沿岸域の水温がアユ遡上量変動に影響 -日本海沿岸域におけるアユ稚魚の生態解明が進む-
(参考資料)

 アユの漁獲量は平成3年(1991年)を境に減少傾向が続いている(図1)。特に日本海側では、平成15~16年(2003~2004年)には広範囲にわたって遡上量が激減し、アユ資源の枯渇が危惧された。この研究では稚アユの遡上量を考慮した漁場管理(放流場所や放流尾数の選定等)に資する目的で、稚アユの生態や減耗要因の解明、遡上量の予測技術の開発に取り組んでいる。


平成17年度に得られた知見
○ 日本海側の河川における平成15~16年(2003~2004年)のアユ遡上量の減少は一時的なものである。平成17年(2005年)以降は遡上量が回復した(図2)
○ 平成14年及び15年(2002年及び2003年)の両年秋に生まれた稚魚は海での生残率が極めて低かったため、それぞれ翌春の遡上量が激減した。一方、平成16年及び17年(2004年及び2005年)に生まれた稚魚は海での生残率が高かったため、平成17年以降の遡上量は速やかに回復した。
○ アユ遡上量の激減にもかかわらず、河川ごとのアユ集団の遺伝的多様性(資源集団としての遺伝的な健全性を表す)は維持されていた。また、資源を維持するために必要な最低限の親魚数も確保されていたと考えられた。
○ 前年の秋から冬(特に10月)の沿岸域の水温が、高いほど遡上量が多い傾向にあった(図3)。これにより、沿岸域の水温が海洋生活期の稚アユの生残率に影響すると考えられる。
○ 日本海側の海で生活するアユの分布は、河川水の影響を強く受ける沿岸から2~3kmまでの沿岸に集中していた(図4)


期待される効果
○ 早い時期に稚アユの遡上量を予測することにより、無駄のない適正な放流量の算定とその実施が可能(遡上量が多ければ放流量は少なく、遡上量が少なければ放流量は多くする)である。
○ これにより各河川におけるアユ漁獲量の安定化とアユ資源の持続的利用が可能となる。


留意点
○ 沿岸域の水温等環境条件が春季の稚アユの遡上量に影響するものの、アユ資源の安定のためには、前年の秋に十分な数の親魚を残し産卵させることが基本である。
○ アユは地方毎に遺伝的差異がある。このため、放流するアユについては、放流する河川の天然アユを親魚として生産した種苗を使用することが望ましい。


今後の研究課題
○ さらに詳細なフィールド調査とデータ蓄積により、平成17年度に得られた知見を一層強固なものとするとともに、よりきめの細かいものとしていく。
○ 本研究プロジェクトにより得られた科学的知見に基づいて、アユ遡上予測技術の開発に取り組む。


研究実施機関
 水産総合研究センター中央水産研究所、山形県水産試験場、新潟県内水面水産試験場、新潟県水産海洋研究センター、富山県水産試験場、福井県内水面総合センター、福井県水産試験場、和歌山県農林水産総合技術センター水産研究所、徳島県立農林水産総合技術支援センター水産研究所、東京大学海洋研究所