プレスリリース

平成18年9月1日
近海まぐろはえ縄漁業の再生を図るために -次世代型近海まぐろはえ縄漁船の実証化調査を実施-
(参考資料)

 近海まぐろはえ縄漁業は、昭和55年に106千トン、674億円の水揚げがありましたが、その後減少し、平成13年には、34千トン、172億円となっています。こうした中でも宮城県気仙沼地区は水揚げ量、水揚げ金額ともに全国の3割を占めています。

 宮城県気仙沼地区の主力である119トン型近海まぐろはえ縄漁船の近年の収支実績は2億円以上の償却不足となっており、このままでは代船建造はおろか経営が成り立たない状況に陥っています。このような状況を改善し、経営の安定継続を図るため、宮城県や気仙沼商工会議所が中心になって「近海まぐろ延縄漁業あり方検討会」や「近海まぐろ延縄漁業経営改善推進委員会」を立ち上げ、気仙沼の基幹産業である近海まぐろはえ縄漁業の再生を図り、地域とともに発展していくための方策が検討されてきました。海青丸の操業システムは改善策の一つとして、気仙沼遠洋漁業協同組合と(社)全国近海かつお・まぐろ漁業協会とが共同で水産庁の「漁船漁業構造改革推進会議」に提案し、早期に実証化の必要がある漁船としてとりあげられました。

 当センターは平成18年度から5カ年にわたる中期計画において、海洋水産資源開発事業の一環として省力化、経費の削減、安全性、労働環境改善、付加価値向上等をキーワードに次世代型漁船の実証化を行うこととし、次世代型近海まぐろはえ縄漁船の実証化調査を実施することにしました。海青丸(建造費3億4千万円)の損益分岐点は1億9,600万円と試算され、本調査は海青丸でのコスト並びに水揚げ金額で上記金額を確保しうることを実証することにあります。

 具体的には、直巻きモノフィラリールシステムの導入により従来船の16名乗り組みから2名の減員を図り、低回転大直径プロペラでプロペラ効率を上げるとともに、船体抵抗を少なくするバトックフロー型船尾で燃料消費量10%削減を目標とするなど経費の削減を図ります。一方、シャーベット状海水氷使用の小区画魚倉や魔法瓶魚倉の導入で、鮮度保持効果を高め、漁獲物の差別化を行い、市場、中卸、加工業者等と協力して販売単価を10%向上させ収入増加を図ります。また、作業甲板の天井部を半分程度塞いだり、居室や通路等の天井を高くして、作業上の安全性の確保や、労働環境の改善を図っています。



<用語説明>
【直巻きモノフィラリールシステム】
 幹縄を海中から巻き上げるためのラインホーラーを搭載せず、モノフィラメントの幹縄を直接リールで巻き上げる方式で、投縄は船尾と作業甲板右舷側(着脱可能)でできる。


【シャーベット状海水氷】
 海水を冷却することにより得られる微細な氷結晶と冷海水が混合したシャーベット状の氷である。
 冷海水や砕氷、水氷に比べて、氷温への冷却時間が短い特性がある。


【魔法瓶式魚倉】
 魚倉が魔法瓶のように二重構造になっている。
 魚倉の内壁と断熱層との間の風路に冷風を循環させて間接的に冷却する。