プレスリリース

平成18年12月21日
ゲノム情報を利用した養殖用アワビ品種作出に向け大きく前進 ~アワビのゲノム連鎖地図を作成~
(別紙資料)


<研究の背景と成果の概要>
 アワビ類は高価格で流通している水産業上重要な貝類ですが、近年その漁獲量は激減しています(図1)。 またアワビの漁獲量は、気候変動や乱獲の影響を受けやすく、漁業収入の不安定を招きます。 そこで高品質で安定したアワビを供給するための養殖生産が期待されますが、特にアワビの成長の遅さがネックになり、国内ではごく小規模な養殖生産が行われているだけです。 過去の研究例から、アワビの成長は遺伝的支配を受けているということが分かっています。 成長に関与する遺伝子の位置を明らかにし、それらを目印とした効率的な選抜育種を行って高成長のアワビ養殖系統を作り出すことができれば、出荷までの養殖期間の短縮および質の揃ったアワビの供給が可能になり、アワビ養殖の振興が期待できます。 本研究では、こうしたアワビ養殖優良系統の作出の効率化に必須のゲノム連鎖地図を作成することを目的としました。

 本研究では、個体間で違いの大きいマイクロサテライトDNAと呼ばれる領域を目印として連鎖地図を作成しました。 得られた連鎖地図は18の連鎖グループから形成されました。 ヒトを含め多くの動植物で、連鎖地図の雌雄間の違いが報告されています。 本研究で雌雄別々に 連鎖地図を作成したところ、やはりアワビでも連鎖地図の雌雄差がありました(図2)。 水産総合研究センターでは、この連鎖地図をもとに、アワビの優良形質(成長、耐病性、殻色など)をコントロールする遺伝子の位置を明らかにして、それらを目印にした選抜育種による養殖優良系統を作ることを目指します。


<本研究の意義>
1.本研究で得られた連鎖地図は、アワビゲノム上の目印を示すものです。 今後、この地図上に新たなDNAマーカーや機能的遺伝子を描き加えることにより、アワビゲノム解読に大きく貢献することができます。

2.この連鎖地図に基づいて、アワビの養殖に有利な形質をコントロールする遺伝子群のゲノムDNA上の位置を知ることができるようになります。 これらを目印とした育種研究を行って養殖優良系統を作り出すことにより、アワビ養殖の振興に貢献することができます。

3.連鎖地図のシンテニー(相同性)を調べることにより、種分類の難しい日本産アワビ類(エゾアワビ、クロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ)の違いおよび進化過程を、ゲノムレベルで明らかにすることができます。


<成果の公表>
論文:Masashi Sekino and Motoyuki Hara: Linkage Maps for the Pacific Abalone (genus Haliotis) Based on Microsatellite DNA Markers. Genetics (印刷中).
(著者)
關野正志 本研究担当者・論文責任者 (水産総合研究センター東北区水産研究所)
原 素之 共同研究者 (水産総合研究センター養殖研究所)


<用語解説>
 ゲノム連鎖地図:生物の持つ染色体上の遺伝子の相対的位置を示す地図。 本研究ではマイクロサテライトDNAと呼ばれる領域(ゲノムDNA中のある領域)を180カ所調べて連鎖地図を作成した。 アワビの場合、染色体数は2n=36であるため、調べた180カ所の領域は、その半数個に相当する連鎖グループ(n=18)に分けられるはずであり、今回の結果は理論通りとなった。


 アワビ類:我が国で水産業上重要なアワビ (Haliotis属)は、寒流域に分布するエゾアワビと、暖流域に分布するクロアワビ、マダカアワビおよびメガイアワビである。 本研究では、この中で水産上最も重要なエゾアワビのゲノム連鎖地図を作成した。