プレスリリース

本邦初!精包を抱えた雌のヤシガニ発見
(別紙資料)

【研究の背景】
 ヤシガニは、体重が3kg以上に達する陸生最大の甲殻類で、インド洋から南太平洋の島々に広く分布している(写真1)。 これらの島々では地域住民の貴重なタンパク源として消費され、バヌアツ島では乱獲のために絶滅の危機に瀕している。日本では南西諸島の島々に生息しており、古くから剥製や食材などに利用されてきた。 特に近年は、地域特産種としての知名度が高くなり、観光客に珍味として食べられたり、ペットとして取引されたりするようになったため、乱獲による資源量の減少が懸念されている。 そのため、本種は環境省のレッドリストの絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されている。 しかし、本種は初期生活史を海洋で過ごすにも係わらず、稚ガニへの変態以降は陸上生活に移行するということもあり、これまでなんら捕獲制限や規制を受けずに現在に至っている。 また、本種の生態についてはほとんど解明されていない。



写真1.今ではめったに見られなくなった体重約1kgの大型個体


【研究の内容・特徴】
 西海区水産研究所石垣支所では地域特産種として期待される本種の持続的な利用を図ることを目的とし、平成17年から竹富町鳩間島(図1)にてヤシガニ資源の基礎調査に着手しており、本年度からは主に繁殖生態を明らかにする調査に取り組んでいる。 本調査では、産卵期は島内陸部と海岸部の2箇所において出現個体のサイズ組成、性比、精包を抱えた雌個体、抱卵および放卵個体の出現状況を調べている。 また、月1回の定期調査では島内に数点の餌場を設け、夜間に捕獲した個体に焼印(外部標識、写真2)と腹腔内に個体識別を行うためのマイクロチップタグ(内部標識、写真3)の二重標識を装着後にリリースし、島内に棲息するヤシガニの成長や分布移動状況などを調べている。
 本種の雄は、交尾時に精包と呼ばれる精子を包んだ袋が紐状に連なった真っ白な物体(写真4)を雌の腹部体表に付着させることにより、雌に精子を渡す。 雌は受け取った精包を使って産卵時に体外受精を行い、受精卵を抱卵するとされている。 しかし、このような精包を抱えた雌個体や交尾行動に関係する観察事例は世界でもほとんど報告されておらず、本種の交尾が行われる場所については依然として謎に包まれている。
 今回の発見は、本種の交尾場所の特定や、飼育下において交尾を行わせる際の重要な知見となり、資源管理計画の策定や種苗生産技術の開発に大きく貢献すると期待される。


図 1. 八重山諸島と鳩間島の位置



写真2.外部標識となる焼印標識



写真3.内部標識用のマイクロチップタグ



写真4.体中央部の白いゼリー状の物体がヤシガニの精包