プレスリリース

南方系海藻の藻場が九州で拡大
(別紙資料)


 【ホンダワラ類の研究の背景】
 ・ ホンダワラ類はヒジキの仲間で、温帯から熱帯域に広く分布し、日本周辺にはおよそ60種が知られています。 多くは多年生(一年以上生きる)ですが、一年生(1年で枯れる)の種も知られています。
 ・ 海のゆりかごと呼ばれる“藻場”をつくり、様々な生物を育む他、海水の浄化機能も果たすなど沿岸域の水産業や海洋環境に大きな役割を担っています。
 ・ 我が国では古くより食料や肥料、しめ縄飾りの装飾などに利用され、日本人にとってなじみ深い海藻です。 大きく成長するものが多く、アカモクという種では7~8mに達します。
 ・ ホンダワラ類のうち、熱帯から亜熱帯域を中心に分布するものを、南方系(暖海性)ホンダワラ類と呼んでいます。 以前から沖縄県や九州に自生することは知られていましたが、近年になって長崎県や宮崎県などで群落規模での確認例が相次いでいます。長崎市周辺の場合、南方系ホンダワラ類は 「春藻場*」の主要構成種で、多年生種でありながら夏以降は藻丈がごく短い状態で過ごします。 このため、夏になると藻場は急に消滅してしまいます(写真)。
 ・ これら新顔の海藻が、沿岸の生態系にどのような影響を及ぼすのかはよくわかっておらず、沿岸の漁業者などからは南方系ホンダワラ類の影響評価や科学的根拠に基づく対応策の提示を強く求められています。


【研究の内容・特徴】
 水産総合研究センター西海区水産研究所では、農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業(現:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業)」等において、南方系ホンダワラ類の九州周辺における分布状況の把握やその影響評価を、瀬戸内海区水産研究所、水産工学研究所、福岡県水産海洋技術センター、佐賀県玄海水産振興センター、長崎県総合水産試験場、熊本県水産研究センター、宮崎県水産試験場、鹿児島県水産技術開発センター、大分県農林水産研究センター水産試験場、鹿児島大学、長崎大学、水棲生物研究所(株)、長崎県大瀬戸町漁業協同組合、鹿児島県笠沙町漁業協同組合との共同で進めています。
① 過去数年間に1970年代と同様の場所、方法で行った九州各地の藻場調査によって、南方系ホンダワラ類の藻場が西岸域では北上していること、東岸域でも宮崎県内の各地で顕在化していることが判明しました(図参照)。
② 1990年代の終わり頃まで、長崎市周辺には多年生種(ホンダワラ類とコンブ類)による「四季藻場*」が広がっていましたが、2000年代に入ってからこれらが縮小し始め、代わって「春藻場*」が多くなってきました。 すなわち、かつては年中あった藻場が短期間しか存在しなくなっていることが明らかとなってきました。
③ 長崎市周辺では、南方系ホンダワラ類は夏場に枯れてしまうため、アワビやウニなどにとっては餌不足となりますが、冬から身(卵巣)が入り始めるムラサキウニの餌としては有効であることが判明しました。
④ 南方系ホンダワラ類の藻場がさらに拡大するのかどうか、在来種の藻場と比較してアワビなどの磯根資源を育む機能はどの程度なのか、周辺環境や水産生物への影響はどの程度あるのかなど、様々な視点に立った調査研究を関係機関と連携を強化しつつ、今後も進めていきます。


*用語の解説
 ・春藻場 :晩冬から初夏のおよそ4ヶ月間に限って形成される藻場
 ・四季藻場:年中大型海藻が茂り、四季を通じて形成される藻場
 (いずれも九州周辺の藻場の現状を端的に表すために提案された新語)