プレスリリース

平成28年 9月 6日
国立研究開発法人水産研究・教育機構
本州沿岸の造礁サンゴ集団は独自に分化
  • ・台湾、琉球列島から本州付近までの海域の、造礁サンゴ集団の遺伝的関係を解析し、本州付近の集団は、台湾の集団と近縁で、黒潮を境に琉球列島の集団とは別に分化したことを明らかにしました。
  • ・この成果は、サンゴ礁の分布の変化を将来予測する上で重要な情報となります。

近年、サンゴ礁の分布が地球温暖化による海水温上昇に伴って北上していく可能性が指摘されています。しかし、造礁サンゴの北限域にどのような種が分布し、琉球列島のサンゴ集団とどのような関係にあるのかはよく分かっていません。

そこで、水産研究・教育機構は、西太平洋に広く分布するテーブル状の造礁サンゴである「クシハダミドリイシ種群」を対象に、台湾、琉球列島、種子島・トカラ列島、サンゴ礁の北限域付近の和歌山・高知・熊本の4つの海域について遺伝的関係を調査しました。その結果、和歌山・高知・熊本と種子島の造礁サンゴ集団は台湾の集団と同じ遺伝的特徴を持つことを明らかにしました。この造礁サンゴ集団の分化には、黒潮の関与する可能性が高いと考えられます。つまり、南から北へ生物を運ぶと思われていた黒潮が、実は琉球列島の集団と台湾や日本列島の集団間の移動を阻んでいることを示唆し、黒潮という流れの壁がいかに強力かを表す証拠になりました。

これらの研究成果は、今後、サンゴ礁の北上メカニズムを解明し、沿岸漁場など日本周辺の環境変動を予測する上で、重要な知見となります。

*本成果は、国際学術雑誌のCoral Reefs の電子版に2016 年7 月25 日付けで公開されています。


詳細資料

本件照会先:
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
西海区水産研究所 亜熱帯研究センター 林原 毅 TEL:0980-88-2571
西海区水産研究所 亜熱帯研究センター 山下 洋 TEL:0980-88-2571
西海区水産研究所 業務推進課 小林 真人 TEL:095-860-1626