プレスリリース

平成30年 9月 27日
国立研究開発法人 水産研究・教育機構


ニホンウナギのレプトセファルス(仔魚)期間の長さは遺伝する
- 人工種苗の実用化に向けたウナギの品種改良が可能に -
  • ●ニホンウナギの仔魚期間の長さが遺伝することを実験的に明らかにしました。
  • ●今後、飼育の難しい仔魚期間を短縮した品種を作出することで、ニホンウナギの人工種苗生産技術の早期実用化へ貢献することが期待されます。
【概要】
  1. シラスウナギの大量生産を阻んでいる要因の一つとして、卵からふ化した仔魚(レプトセファルス)がシラスウナギに変態を始めるまでの期間(仔魚期間)が非常に長いことがあげられます。天然環境下では孵化後110〜170 日程度、人工飼育下では孵化後160〜450 日程度かかります。この期間は飼育が難しく飼育コストも高いため、従来から飼育技術や初期餌料の開発などに取り組んできました。その一方で、仔魚期間そのものを短くするという全く別の研究アプローチも望まれていました。
  2. 今回我々は、ニホンウナギの大規模な交配試験と遺伝解析により、仔魚期間の長さが親から子に遺伝することを明らかにしました。このことは、選抜育種による遺伝的改良によって、従来よりも短い飼育期間でシラスウナギに変態する品種が作出できることを示しています。
  3. 今回の交配試験で得られた人工集団を用いて、ニホンウナギの育種を開始しました。早ければ2019 年度に第一世代の仔魚が作出されます。その後は、選抜と交配を繰り返して徐々に遺伝的改良を重ね、10〜15 年後に仔魚期間を20〜40%短縮した早期変態品種の作出を目指します。また、この過程で生産される仔魚は、適宜、様々な試験研究に提供され、人工種苗生産技術の早期実用化のために活用されます。
  4. この成果は、8 月30 日に英文専門誌「PLOS ONE」誌に発表されました。

*本研究成果は、平成28 年から開始した農研機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業」のうち「水産物の国際競争に打ち勝つ横断的育種技術と新発想飼料の開発」の一環として行われました。

参考資料

本件照会先:
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
増養殖研究所 ウナギ種苗量産研究センター 野村 和晴 TEL:0599-66-1830
本部 研究推進部 藤原 篤志 TEL:045-227-2716