プレスリリース

平成30年 9月 27日
国立研究開発法人 水産研究・教育機構


タイラギの人工受精方法の開発に成功
  • ●タイラギの人工受精方法を世界で初めて開発し、得られた幼生が着底稚貝まで生育することを確認しました。
  • ●今後、タイラギの増養殖に必要な種苗の安定供給に貢献することが期待されます。

 タイラギは大きな貝柱が美味な大型の二枚貝です。瀬戸内海や有明海を中心に国内の海に広く生息し、昭和30 年代には年間の漁獲量が3 万トンを超えたこともありました。しかし近年、資源量が激減し、漁獲量は最盛期の数十分の1になっています。特に国内で最も漁獲量が多かった有明海ではほとんど採れなくなり、資源保護のための休漁を余儀なくされるなど深刻な事態となっています。

 水産研究・教育機構では、これまでにタイラギの人工種苗生産技術を開発し、生産された稚貝の漁場への放流や養殖を行うことで資源や生産量を復活させる取組みを進めています。この種苗生産では、成熟した親貝を入れた水槽の温度を制御して産卵を誘発しています。しかし、必ずしも産卵に成功するわけではなく、また産卵をしても産卵時間がまちまちで安定した計画採卵(産卵)ができませんでした。そのため、確実に受精卵を得られる人工受精の技術開発が強く求められていました。

 水産研究・教育機構では大学と協力してタイラギの受精メカニズムの研究に取り組み、タイラギ卵巣から取り出した卵をビタミンA の関連化合物であるレチノイン酸で処理することで人工受精が可能になることを発見しました。この知見を基に「イノベーション創出強化研究推進事業」(農研機構生物系特定産業技術研究支援センター管轄)の中で孵化幼生を安定して大量に生産する人工受精技術を開発し、2018 年8 月には大分県農林水産研究指導センターの協力で、本技術を用いて得られた受精卵から孵化した幼生が着底稚貝まで生育することを確認しました。この成果は、タイラギ種苗の計画的な生産や安定供給に大きく貢献するものとして期待されます。

参考資料

本件照会先:
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
増養殖研究所 養殖システム研究センター 松本 才絵 TEL:0599-66-1830
増養殖研究所 養殖システム研究センター 坂見 知子 TEL:0599-66-1809