プレスリリース
令和元年 7月 25日
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
国内初、立地条件を選ばないサツキマスの陸上養殖の達成!
- 当機構において開発された閉鎖循環飼育システムを利用して、海水飼育経験親魚からの採卵をはじめ、淡水を用いた種苗生産から海水を用いた養殖生産まで一貫したサツキマスの生産管理が、どんな場所でも可能となりました。
近年、日本全国で冬期間の低水温を利用した海面サーモン養殖が盛んに行われており、さけます類で塩分耐性の強い優良種苗の作出が望まれています。その作出のためには、海面で優良な成長を示した個体を親魚候補として選抜し、内水面施設に導入する方法が考えられます。しかし、その際に海水由来の疾病を内水面に持ち込む懸念があることから、親魚候補の内水面への導入はこれまで積極的に取り組まれてきませんでした。種苗の安定供給を図りながら塩分耐性の強い優良種苗を作出するには、疾病リスクを管理した上で、淡水と海水を往き来するさけます類のライフサイクルを同一施設内で一貫管理できる飼育技術の開発が求められます。
水産研究・教育機構瀬戸内海区水産研究所では、中部日本以西に生息するアマゴの降海型であるサツキマス( Oncorhynchus masou ishikawae )を、陸上の閉鎖循環飼育システム水槽を用いることにより、大量の淡水を使わず少量のカルキ抜き水道水だけで、産業レベルと同等の飼育密度で卵から平均体重126g の種苗に育てることに成功しました。このたび、この種苗を用いた海水飼育を陸上で継続した結果、飼育したサツキマスは平均体重1,311g に達し(生残率98%)、陸上施設内での一生を通じた養殖が国内で初めて達成されました。
これにより、サツキマスの完全陸上養殖に繋がる技術が確立され、これまで種苗生産が行われていなかった地域でも生産が可能となります。本技術の応用により、その他のさけます類を含めた、塩分耐性の強化を目的とした育種や種苗の安定生産への貢献が期待されます。
※本研究の成果は、農研機構生研支援センター「「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業(革新的技術を集約した次世代型閉鎖循環式陸上養殖生産システムの開発と日本固有種サクラマス類の最高級ブランドの創出)」の支援を受けて得られたものです。
本件照会先:
国立研究開発法人 水産研究・教育機構 | ||
瀬戸内海区水産研究所 資源生産部 | 今井 智 | TEL:087-841-9241 |
瀬戸内海区水産研究所 資源生産部 | 本田 聡 | TEL:0829-55-3547 |