プレスリリース

平成21年6月30日
(独)水産総合研究センター
世界初!クロマグロ全ゲノム解読に王手!
ポイント
 ・次世代型シーケンサーの活用により海洋生物ゲノム研究が飛躍的に進展
 ・ゲノム情報を活用した養殖用優良仔稚魚の選別技術を開発

 まぐろ類の養殖や資源の管理のための研究開発の重要度が国際的に高まっており、技術開発に不可欠な遺伝子情報などの生物学的基礎データの把握が急がれています。そこで独立行政法人水産総合研究センターは、育種技術を通じた革新的なクロマグロ養殖技術の開発を目指し、東京大学および九州大学と共同で、世界初となるクロマグロの全ゲノムDNA塩基配列の解読と有用遺伝子の解析に着手し、年内にはその概要が明らかとなる見込みとなりました。
 クロマグロは24対の染色体を持ち、そのゲノム全体の大きさは約8億塩基対と見積もられています。そこで、現在、従来型の数百倍の処理能力を持つ次世代型高速シーケンサーを使い、断片化したクロマグロの全ゲノムの塩基配列の解読を進めています。今後これらの配列が具体的にどの染色体のどこに位置するのかを解析し、全ゲノムDNA塩基配列の完全な解読を目指します。
 クロマグロの全ゲノムDNA塩基配列を解読することにより、全遺伝子情報が把握されるため、成長がよく病気に強いなどの有利な遺伝的性質を持つ養殖品種を作り出すことが容易になります。また、遺伝子情報の整備は、世界中の海で漁獲されるまぐろの産地判別(どこで獲られたか)や個体識別(1尾1尾の違い)をも可能にするため、まぐろ資源のきめ細やかな管理技術の開発、漁場から食卓までのトレーサビリティーの確立、さらには高速遊泳や体温保持、高DHA蓄積などまぐろの持つ特殊能力を土台とした新たな機能性食品や医薬品の開発などへの応用も期待されます。


世界全体のクロマグロ漁獲量と養殖の動向 クロマグロ養成施設
世界全体のクロマグロ漁獲量と養殖の動向
(FAO資料に基づいて作図)
クロマグロ養成施設
(水産総合研究センター奄美栽培漁業センター)

養魚生け簀内を遊泳するクロマグロ 次世代高速シーケンサー
養魚生け簀内を遊泳するクロマグロ
(水産総合研究センター奄美栽培漁業センター)
クロマグロ全ゲノム解読に用いた次世代高速シーケンサー
(東京大学大学院新領域創成科学研究科)


本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
経営企画部 広報室 広報企画係長 佐野春美 TEL:045-227-2624
中央水産研究所 水産遺伝子解析センター チーム長 中島員洋 TEL:045-788-7667,  小林敬典 TEL:045-788-7620