プレスリリース
(独)水産総合研究センター
~ウナギに関する研究成果を展示します~
独立行政法人水産総合研究センターは、天然ウナギ資源の減少に伴うシラスウナギ価格の高騰・シラスウナギの入手困難を緩和し,ウナギ養殖業界の安定と天然ウナギ資源の回復,養殖ウナギの安全・安心の確保を目的として,ウナギの完全養殖と稚魚の大量生産の研究を続けています。
当センターは2003年に世界で初めてウナギを卵から稚魚まで育てることに成功しましたが,ウナギの親や仔魚の飼育方法の手本となるべき天然の親ウナギや仔魚に関する生物学的情報はほとんどありません。特に成熟した親ウナギは世界のどこでも見つかっていなかったため,そのことが親ウナギを成熟させる技術の開発や生まれた卵の質的向上の障害となっていました。
そこで当センターと水産庁は,昨年度から漁業調査船「開洋丸」と「俊鷹丸」,「北光丸」を用いてウナギの産卵場調査を開始し,昨年は世界で初めて産卵場所と思われる海域で成熟したオスと,産卵後と思われるメスを発見することができました。当センターブースにはその標本を展示します。さらに本年は,成熟した卵を持つメスや,消化管内に食べたものが残っている仔魚を捕獲することに成功しました。これらの成果は,親の成熟,仔魚の飼育に大きく役立つと期待されます。
また人工ふ化仔魚の飼育研究も継続しており,最近では親ウナギのエサの改良や仔魚の飼育環境の改善などで,飼育100日前までの生き残りが大幅に改善されています。それらの成果を応用した量産化のための飼育試験では,昨年度は前年の2倍以上となる年間230尾をシラスウナギまで育てることに成功しました。ブースには,卵から育てた生きた仔魚(レプトセファルス)と稚魚(クロコ)を展示しています。
当センターは,今後も調査研究を継続し,一日も早いウナギの完全養殖と稚魚の大量生産に向けて研究を続ける所存です。
- 1.展示品:
- ・2008年に世界で初めて産卵海域で捕獲された親ウナギ(オス1尾,メス1尾)の標本
- ・卵から育てたレプトセファルス(全長約2cmふ化後47日と全長約4cmふ化後187日)
- ・卵から育てたウナギの稚魚(全長約8cmふ化後約1年半)
- ・パネル 4枚
- 2.説明者:
- ・井上 潔 (いのうえ きよし:独立行政法人水産総合研究センター 研究開発推進理事)
- ・生田 和正(いくた かずまさ:同 研究推進部 チーフ研究開発コーディネーター)
独立行政法人 水産総合研究センター
経営企画部 広報室 広報コーディネーター 関根信太郎 TEL:045-227-2622