プレスリリース
(独)水産総合研究センター
-漁業者によるニシン増殖活動の成果が見え始めた-
水産総合研究センターでは、宮古栽培漁業センターが中心となって、1984年から宮古湾におけるニシンの種苗放流を行っています。放流開始前は、宮古湾のニシンの漁獲量はわずか数キロでしたが、現在では1トンを超えるまでになり、大幅に増加しました。ニシンが増えたことにより、定置網にも多くの卵が産み付けられるようになり、ニシンを大切に管理しようとの考えから、2004年以降は、漁業者自らが主体となって「卵の保護」(※1)や「受精卵放流」(※2)にも取り組んでいます。
受精卵放流は、人工授精した卵を付けた付着器を海に吊すだけの方法であり、稚魚まで育てる必要がないため、手間やコストがかからず、漁業者自らが実施可能な手法であり、漁業者の資源管理意識の啓発にもつながるものです。
宮古栽培漁業センターでは、その放流効果を把握するため、受精卵放流の追跡調査を実施しました。その結果、卵からふ化したニシンが宮古湾内で順調に成長することを明らかにしたのに加え、放流後2年以上経過して宮古湾に産卵のため回帰した標識魚を、これまでに合計10尾確認することができました。
このように、漁業者による産卵ニシンの自主管理効果を検証できたことは、資源管理意識が高まる明るいニュースであるとともに、受精卵放流による放流効果の確認は海産魚類では初めての快挙であり、今後、ニシン資源への受精卵放流の添加効果などのデータが得られると期待されます。
(※1)卵の保護:
定置網に付着した卵を保護するため、卵がふ化するまでの間、漁獲用の網を海中に吊したままにしておき、ニシンがふ化するまで待つという保護の手法。
(※2)受精卵放流:
人工授精した卵を付けた付着器を海に吊して、ニシンのふ化を待つ方法。付着器を海に吊す前に、卵の段階で耳石に識別のための標識を施すことが可能。
<添付資料>
・詳細(PDFファイル)
独立行政法人 水産総合研究センター
経営企画部 広報室 広報企画係長 佐野春美 TEL:045-227-2624
宮古栽培漁業センター 場長 青野英明 TEL:0193-63-8121
宮古栽培漁業センター 主任技術開発員 長倉義智