プレスリリース

平成24年11月 1日
独立行政法人水産総合研究センター
人工的に生産した造礁サンゴ幼生を高い生残率で着生・生育させるサンゴ増殖技術を開発
~世界で初めて自然環境下で従来の10 倍以上の生残率を達成~
  • 格子状サンゴ増殖用基盤へ人工的に着生させたサンゴの生残率を高める対策を開発しました
  • この技術により、手間をかけずにサンゴ群集を修復・造成することが可能になります

近年、沖縄を含む世界中のサンゴ礁域で、造礁サンゴに共生する藻類が失われる白化現象やオニヒトデの大量発生などによりサンゴ群集が衰退し、サンゴ礁に生息する魚介類も減少しています。サンゴ礁域の水産資源の回復には、稚魚の成育場として重要なミドリイシ属サンゴなど枝状サンゴ群集の回復が重要ですが、自然環境下ではサンゴの幼生の供給量やその後の生き残りが少ないため、急速な回復は期待できません。また、これまで国内外で人工的なサンゴ幼生の着生研究が行われていますが、自然環境下での生残率は半年後で1%程度しか得られていませんでした。

そこで、生残率を高めるために、幼生の着生密度のコントロール、格子状サンゴ増殖用基盤を2段重ねとする、格子サイズの小型化などの対策をとって、人工的に生産したミドリイシ属サンゴの幼生を樹脂製のサンゴ増殖用基盤に海中で直接着生させ、着生から約1年3か月後に、10 群体/100 ㎝ 2 以上の高密度(生残率46%)、平均生残率18.1%と従来の値を大きく上回る高い生残率を世界で初めて確認することができました。

この成果から、サンゴ幼生が着生可能な岩盤が乏しい砂地やガレ場のような場所でも、手間をかけずにサンゴ群集を修復・造成させることが可能となり、局所的なサンゴ再生法としてサンゴ礁の修復保全に大きく役立つことが期待されます。


なお、本成果は、水産庁の「厳しい環境条件下におけるサンゴ増殖技術開発実証事業」と(株)ダイクレとの共同研究「サンゴ着生・生残に資する基盤構造物の開発」によるものです。

参考資料

本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
西海区水産研究所 亜熱帯研究センター 照屋 和久 TEL:0980-88-2856
経営企画部 広報室 角埜 彰 TEL:045-227-2624